■賛同できる考え方を提示することの威力:長期の信頼関係の構築について

       

1 考え方の一致がメリットに先立つ

先日、業務マニュアルの講義で、賛同する考えが提示できたら、そのあとにメリットがあるかという話になるといった話をしました。こうした手法で、大切な営業を成功させた事例がありましたので、ちょっと触れておこうかと思ったのです。

考え方が一致したら、それは安心感や信頼につながります。そう考えるのなら、一緒に仕事ができるということです。当然それだけではビジネスになりませんから、メリットがあるようにしないといけません。しかしメリットが先ではなくて、賛同が先です。

こんなお話だったのですが、休み時間にお話してみると、そうですそうですと、すぐに賛同してくださる人ばかりではありませんでした。メリットが大切だという考えが強かったのかもしれません。何となくはわかりますといった感じでした。

      

2 国際関係でも利害よりも価値観の共有が重要

考え方に賛同できるかどうかは、長期的な関係構築にとって大切です。短期的なビジネスの場合、メリットが優先されることもあると思います。しかしメリットばかりでは、長期での安定的な信頼関係は簡単には得られません。国際関係でも同じでしょう。

アメリカのトランプ大統領が、同盟国に対してまで、ずいぶん攻撃的な言動をしていて、同盟関係が揺らぐという人もいます。そういう人はたいてい、ロシアとチャイナが手を取り合うように連携を強めている、危機的状況だと言いがちです。たぶん違うでしょう。

自由主義や民主主義、法の支配といった価値観を共有する国々は、簡単に関係が壊れません。逆に、その時に大きな点で利害が一致して関係が強化されても、利害関係というものは、完全に一致しませんから、どこかで崩れます。長期的な関係構築にはなりません。

      

3 目的が組織を成立させ連携を生む

組織を成立させているのは共通の目的のはずです。しかし、ミッションとか、フィロソフィーとか、理念とか志とか、そういう話をすると、抽象的だという感じになります。抽象的でなくては永続しませんが、表現形式を詰める必要があることは確かです。

組織の中核になるべき考え方が、明確であることは強みになります。概念の明確性は絶対条件です。自由主義、民主主義、法の支配という概念だけで、その国の基本的な考えが見えてきます。それぞれの組織でも、こうした価値観を持つ方が強いはずです。

個々の目標は不可欠なものですが、人を引き付ける価値観があると、賛同者が集まってきて、その人たちの集団が組織の核になります。小さな組織でも、同じことが起きるのです。こういう中核が形成できるかどうかが、組織の成功の分かれ目にもなります。

組織を作ってみれば、おそらくわかります。賛同できる価値観に基づいた行動は、全方位で成功するわけではありませんが、賛同する人たち同士で、結びつきを強めることになるはずです。ささやかな経験から、こうした確信があるため、こんなお話をしたのでした。