■業務マニュアルの再定義:「manual labor」と目的

       

1 「manual labor」の意味

英語と日本語を対比してみると、ときどき妙に納得することがあります。「manual labor」という英語は、日本語ではどんな言葉になるでしょうか。こんな質問をしてみると、すでにご存知の方以外、なかなか正解がでてきません。肉体労働のことです。

1920年代に機械化・自働化が進み、人間は単純作業を繰り返し行うようになりました。各国で科学的管理法と呼ばれる「テイラー・システム」が導入され、人間性に合致しない作業を、人間側の努力によって、対応できるようにしていた時期がありました。

業務についての考えが変わり、もはや先進国でテイラー・システムは例外的な存在になっています。かつての標準化・定型化された大量生産方式が崩れつつあると言ってよいでしょう。業務自体を再定義する必要があります。業務マニュアルも再定義が必要です。

      

2 業務が変われば業務マニュアルは変わる

マネジメントに対する認識が変わってきています。マネジメントはビジネス人の必須の知識になってきました。したがって、業務を考え、業務を構築する際にも、マネジメントの観点から考えていくことが当然になっています。業務自体が変わらざるを得ません。

同じ成果を上げる仕組みを作るにしても、人間にとって快適な仕組みを選択しなくては、継続が難しくなります。人間的という言い方になるかもしれません。だからと言って、のんびりで良いわけもなくて、独創性を発揮したり、高度な知識を要求されます。

業務が変われば、業務マニュアルが変わるのは当然のことです。業務自体の変化に伴って、業務の記述の仕方も変わります。何から何まで、こうするように…とは書けません。いまや「manual labor」用のマニュアルの記述法では、通用しないのは当然です。

      

3 目的と目標を分ける

業務をする人が考えなくてはなりません。考えるためには、考え方の基礎が示されることが必要です。自由に考えられる環境は必要ですが、それがバラバラでは成果に結びつきません。考え方とかフィロソフィーとか、目的とか、それらが必要になります。

業務についての、考えるための指針をどう記述すればよいか、これが問題です。「目的は何か」を示さないといけません。それも全体の目的と個々の目的が必要となります。全体の目的は、たぶん英語にすると「mission」でしょう。目標とは違う概念になります。

「purpose」経営という言い方もあるようですから、こちらも全体的な目的を示す言葉かもしれません。個別の目的となると、英語ではどうなるのでしょうか。「intention」かもしれません。少なくとも「aim」や「goal」「objective」にはならないでしょう。

目的とは、具体的なもの、客観的なもの、点で示すものなど、定量的に示すものではありません。それは目標です。場面によっては目的と訳される言葉でも、ビジネスでの目的とは違います。目的が大切です。従来よりも目的と目標を分けて考える必要があります。