■生成AIが敬語の簡略化を促進するのではないかという予感

      

1 敬語がきちんと使える人は例外

敬語が使えない人の話は、もうずいぶん前から聞かされていると思います。いい年して、まともな敬語が使えないと言われる人が、職場にもいたはずです。しかし、もはや多くの人が、まともな敬語が使えなくなっています。若者は、たいていそうなりました。

敬語などよくわからないという人でも、無理して敬語を使わないとまずいと思う場面も、何度かあります。こういう時、本人は乗り切ったと思っているかもしれませんが、たいてい聞く側が気味の悪い思いをしながら、それにつきあうことになるのでしょう。

サービス業に従事する人たちも、もはや自然な敬語が使えなくなっています。少し前にも、かなり名の知れた施設のトップの人が、とんでもない文章を書いてきました。おそらく50代です。敬語がまともに使えるはずもありません。こういう人がトップになります。

      

2 敬語が使えないと言う若者が8割

もはや職場にも、きちんとした敬語を使うようにと言えるだけの指導者が少なくなってきました。使いこなせているはずの人も、そんな偉そうな話はできませんと言うでしょう。しかし、あの人の言葉づかいを聞くと、こわくて仕事が頼めないという話もあります。

若者に聞いてみると、自分は敬語が使えないと考えている人の割合が、きわめて多いのです。教室で聞いたときには、8割程度の人が、自信がないということでした。連絡するときに、敬語が必要な場面では、当然のように、生成AIのお世話になります。

使う本人たちは、失礼がないようにという気持ちから利用しているのです。そして、なぜか圧倒的な割合で、生成AIを使っても、相手は気がつかないと思っています。生成AIは性能がどんどん良くなっているため、一発勝負なら、かなり効果があることも確かです。

     

3 生成AIがお手本

敬語は簡略化する方向に進むしかないのでしょう。本人たちは、生成AIを使った文章の方が、自分の文章よりも丁寧な言い回しになっているのを見て、安心して利用しています。利用していることが、わからないと思うほどに、もはや敬語が使いこなせないのです。

日本語は文脈に合わせて言葉づかいが変わります。敬語に限らず、言い回しが変わるのが自然です。はじめに生成AIを使っているのに気がつかなかった場合でも、何度かやり取りをするうちに、これは変だと感じる確率が高くなります。生成AIには限界があるのです。

年上の人や、地位の高い人に対して、敬語を使っているように見える人でも、「なるほど」という言葉を平気で連発する人が出てきています。あれはやめた方がいいと注意する人など例外です。あと数年で、敬語がそうとう程度、簡略化される予感があります。

生成AIの敬語はそつないように見えて、気味が悪いものです。もっと簡略化したほうが自然な場面でも、無意味に丁寧な言い方になります。しかし性能が上がれば、無駄な敬語が消えていくのでしょう。お手本が変われば、敬語自体も簡略化されるはずです。