■業務の目的を「収益改善のため」とした若手リーダー:目的と目標

      

1 目的は「収益改善のため」?

少し前、マネジメントの勉強をしている若手リーダーが、新たな仕事についての文書を作っていました。新たな仕事の業務内容を明確にしてほしいという要望があったとのこと。チームが結成され、その人たちが新年度から仕事を始めます。そのための文書です。

この仕事に従事する人たちが、どんな業務をするのか、会社側もチームの人達もわかっていなくては困ります。ここには業務の目的が記述される必要があるでしょう。そうした指導もあったようです。この文書には、「収益改善のため」と書かれていました。

業務の目的を文書に入れるのは、当然のことでしょう。それ自体は問題ありません。しかし、「収益改善のため」というのは、漠然とした目標にすぎないのではないかと伝えました。目的と目標の概念が違うと言ったのですが、意味がわからなかったようです。

      

2 目的と目標は別概念

若手リーダーのトレーニングのために文書を作るように言われたのでしょう。いきなり合格点の文書にならなくても驚きはしません。ただ、目的の概念がわからないというのでは困ります。「…のため」という形式になっていれば、目的を表すと思っていました。

説明する際に、目的を記してほしい、「…のため」ということをはじめに書くようにと言われたそうです。今回驚いたのは、指導にあたった幹部クラスの人が、目的の概念を意識していなかった点にあります。「収益改善のため」でよいという認識だった様子です。

業務の目的だけを考えると、形式上「…のため」となっていれば、よい気がします。ところがここで、目的は収益改善、目標はいくらと決めたのでは、本来の目的の役割が果たせないのです。目的と目標は別概念であるからこそ、両者の相乗効果があります。

      

3 定性的で哲学の要素を持つ「目的」

目的は、定性的なものです。戦略を練る場合、こうやって、こうしたらうまくいくだろうという切り口が大切になります。これが定性的なアプローチです。こうやって、こうしてという風にストーリーが流れています。定量的に詰められるものではありません。

目的があれば、それを実現するためのストーリーが生まれてきます。ストーリーを生み出す要素を含んでいるということです。つまりは、哲学・フィロソフィーの要素を持っているといえます。こうした意識をもたないと、目標と類似の概念になってしまうのです。

目標は、達成の水準を示すものです。水準によって、達成したか否か、どの程度の達成だったかがわかります。水準は定量的なものでなくては、これができません。「収益改善」ならば、数字で詰めていけます。だから詰めの甘い漠然とした目標らしきものです。

あえてその業務を作ったのは、本来の業務目的とは違う作業量が増えてきて、サービスの低下が起こるリスクを感じたためでした。作業に見える業務を一括し独立させれば、一気に効率化が進むはずです。目的をどうするか、いま若手リーダーの宿題になっています。