■ドン・キホーテ創業者の安田隆夫『安売り王一代』:クレバーな経営者
1 麻雀で知る運気と勝負の勘どころ
「ドン・キホーテ」の創業者である安田隆夫の『安売り王一代』を読むと、クレバーな経営者だということがわかります。とても常識人ではありません。しかし飛び抜けて優秀なのです。[こうと決めたときの私の集中力の強さはず抜けている](p.22)のでした。
勉強嫌いでも、やればできるのです。慶応大学に入学します。しかし華やかな慶応ボーイにはなれません。[ならば自分で起業するしかない]と思ったのです(p.24)が、新卒で入社した会社が10カ月後に倒産します。しばし麻雀で糊口をしのぐことになりました。
結果として[真剣勝負の中で、「運気の流れ」「勝負の勘どころ」などを見抜く力を身につけた]のでした(p.31)。そして後に、勝負を賭けることになります。[従業員ごとに担当売り場を決め、仕入れから陳列、値付け、販売まですべて]丸投げしたのです(p.76)。
2 仕事はエンドレスゲーム
丸投げすると、売り方を[皆必死で考え、いろんなアイデア、方法を試みる]ことになります(p.78)。[権限移譲によって、仕事が労働(ワーク)ではなく、競争(ゲーム)に変わった]のです。成功の決め手はゲームの[方針を定め、厳守させた]ことでした(p.79)。
・明確な商売基準(勝ち負けがはっきりしないゲームはゲームではない)
・タイムリミット(必ず一定の時間内に終わらなければそもそもゲームにならない)
・最小限のルール(ルールが多くて複雑なゲームはわかりにくくて面白くない)
・大幅な自由裁量権(まわりから口を出されるゲームほどやる気が失せるものはない)
(以上、p.79)
このゲームは[一試合ごとの勝率を競うゲームではなく、どこまでも点の総量(得失点差)を競いあうエンドレスゲーム]です。勝つには、[「小さなたくさんの失敗(負け)」と、「数少ない大きな成功(勝ち)」があればいい]ということになるでしょう(p.213)。
3 運を使いきること
安田は言います。成功したのは「運が良かったから」と答える人がいても、[本心ではないはずだ]、なぜなら[私は、人によって運の総量そのものに大差はないと考えている]からです。問題は[与えられた運をどう使ったかという違い]にあります(p.215)。
「運を使いきる」には、[エンジン全開で思い切りレバレッジ(てこ)をかけ、その幸運を一気呵成に増幅させなければならない]のです。[たいがいのピンチはしのげ]ますから、[そこに全精力を集中]してはいけません。[幸運の最大化]が大事です(p.216)。
▼長い人生でも、大きなチャンス(幸運)には、そうたびたび遭遇するものではない。繰り返すが、そういう時は、がむしゃらに一点突破する気持ちでいいから、行けるところまでとことん突き進むべきである。そうして幸運の最大化を図れば、それがまた次の幸運を引き寄せる。 pp..216-217
[チャンスがある時(幸運な時)に機敏な対応を]、[ツイてない時、もしくはどちらかわからない時は、じっと耐えて何もせず、ひたすら守りに徹する](p.217)、[このメリハリと使い分けが、私の人生と仕事における最大級の成功ノウハウ]でした(p.218)。