■マネジメント用語の概念:王道は「目的・目標・手段」

     

1 役に立たないマネジメントの本

若者がマネジメントの勉強を始めました。マネジメントの本には、定番の教科書がありません。そのため何を読んだらいいのかわからない様子です。それで、ひとまず『マネジメントの名著を読む』に代表的な本が紹介されているからと伝えました。

途中まで読んで、頭がぱんぱんですとのこと。紹介されている本を、普通のビジネス人が読むとは思えません。こんな本があるとわかるだけで十分でしょう。最初がミンツバーグの『戦略サファリ』を扱っていますから、ここだけでも読めばいいと思います。

従来から提唱されていた見解が、役に立たない可能性があるのだとわかれば、十分です。もっと原理的な思考があるのに、こういうことはマネジメントの本には書かれていません。創業社長などを見ると、自分の経験の裏づけのために本を読んでいる感じでした。

     

2 目的・ミッション・フィロソフィー・パーパス

企業の理念とか、目的とか、ミッションとか、フィロソフィーとか、いろいろな言い方をする概念があります。ビジョンよりも上位の概念です。これらがどう違うのかと論じる文章もありますが、ピタッといっていません。概念が明確になっていないのです。

目的がパーパスという英語になって、パーパス経営という言い方もなされるようになりました。これとミッションはどう違うのかという話をする人もいます。ミッションの概念が明確になっていないため、新たな用語が出てきたということでしょう。

マネジメントの概念を明確にしようとしても、各人が独自の定義をしますから、議論がかみ合いません。これは哲学の分野で起こったことの後追いのようなものです。同じ哲学の用語を使っても、意味が違うと主張するため、結局は、議論にならなくなりました。

     

3 王道の「目的・目標・手段」

目的は、何のために行うかを問うものです。目標は、個々の目的が達成された場合の判定基準になります。目的はかくあるべきという定性的な概念であり、目標は達成したかしなかったかがわかるか、どのくらい達成したかがわかる定量的な概念です。

目的と目標には、定性的か定量的かの違いがあります。パーパスもミッションも、定性的なものです。目的は小さな事項にもありますし、大きなものにもあります。目的=パーパスに経営をつけた場合、組織の最高階層の目的ということになります。

ミッションは、組織の最高階層の目的のことです。パーパス経営の場合、最高階層の目的にそって経営するということになります。目的のうちの最高階層のものがミッションですから、組織のミッションにそって経営したら、パーパス経営になるということです。

業務のプロセスごとに目的は存在しますが、それらをミッションとは呼びません。一方、目標はプロセスごとに存在します。手段もプロセスごとに存在するものです。概念を整理して使うならば、目的と目標、手段を並べて使うことになります。これが王道です。