■書くべき理由:思考を検証するための手段
1 大切なのは思考の整理
生成AIが便利に使えるという話をしていた若者が、講演録を作ろうとしたら、生成AIに負けると言っていました。音声を文字に変え、文字に変えたものを整理してまとめることができるのだそうです。世の中の技術進歩は大したものだと思います。
ところが、出来上がった講演録があまり良くないのです。こんな水準なのかと確認すると、そうですとのこと。講演の流れに沿って文字変換していますから、おかしくはないはずです。しかし内容が整理されていません。話したままでは、理解しにくいでしょう。
技術の進歩によって事情が変わって、そのうち、もっと良くなるかもしれません。いずれにしろ、話を聞きながら理解できるのは、あちこち話題が飛んでも、頭の中で話の流れが見えているからです。大切なことは、思考を整理することだということになります。
2 思考の整理を検証すること
文章を書く場合にも、頭の中が整理されていないと、書き出すことさえ困難になります。これを書こうという内容があったとしても、それが明確な言葉にならなくては、感覚的なことしか表せません。他の人に理解できる話の流れがないと困ります。
もし頭の中がある程度整理できていたら、ポイントを短いメモにできるはずです。それができて、自分の言いたいことが明確なら、書き出すことはできます。当然、そこからきれいにまとまらなくて困った、という事態が生じることにもなるでしょう。
頭の中が整理されているのかどうか、書いてみれば、本当かどうかが検証できます。思考が整理されて、明確性を持っていたら、文章はピタッと決まるはずです。しかし、そうなっていないことが多々ありますから、書いてみることで不十分さが見えてきます。
3 書かなくてはいけない理由
文章を書くのには、3段階があるのかもしれません。はじめに、思考を整理すること、次に、整理した思考が伝わるように、明確な言い方にすることです。最後に、実際に書いてみて、思考が整理され、明確な言い方になっているかを確認することになります。
思考の整理を確認するには、構成の骨組みをメモで記せるかどうかで、ひとまずわかるでしょう。明確な言い方、わかりやすい説明の仕方に変換することは、言いたいことを一般化、標準化することになります。内容が伝わるように変換するということです。
こうして書けるようになっても、実際に書いてみないと検証できません。思考は見えませんから、書くということは、思考を「見える化」するということになります。内容が同じでも、見え方によって理解が変わるはずです。しかし、もっと重要なことがあります。
書いてみると、自分の独自の考えで、なかなか素晴らしいはずのものが、なんとも冴えないと感じてくるものです。書くこと、記述することで、自分の思考を整理したはずのものが、いかに情けないものかに気づくことになります。だから書かなくてはダメなのです。