■新人類という概念:安定化へと転換した時期に育った世代
1 日本で新人類と呼ばれた世代
新人類と呼ばれる世代がいました。いまでも、ときどき目にする用語かもしれません。マーケティングでは、1961年から1970年に生まれた世代を新人類と呼ぶようです。しかし新人類と呼ばれた人には1950年代後半の人もいましたから、漠然とした区分といえます。
日本では、この世代が成人を迎えて社会に出てきた1980年代に、新人類という言い方がなされました。日本が高度成長を迎えて、混乱期が過ぎ去ったころの世代です。それまでの世代とに比べて、大混乱の記憶や貧困の深刻さが和らいだ世代と言えるでしょう。
ある程度の余裕が出てくると、自然に秩序が生まれてきます。かつてのカンニングの伝説などは、お笑いの対象になっていきました。これ以降、カンニングを大々的にする人たちはいなくなったはずです。じつは、留学生にも似た現象が出てきています。
2 カンニングをしなくなった学生
いまから10年程前までは、韓国や台湾からの留学生の中にもカンニングをする学生がいました。当然、少数派です。しかし日本人学生のカンニングがほぼゼロだったので、目立ちました。それが徐々に減ってきて、今では韓国・台湾の学生は日本人と変わりません。
問題は中国人留学生でした。何もチェックをしなければ、驚くほど多くの学生がカンニングに加担します。個別チェックよりも正確だろうと、講義中の成績を記録し、試験の点数の集計と比較したことがあります。2018年頃、両者には不自然な程の違いがありました。
一定数の学生がカンニングしていることは、ほぼ間違いないとの数字が出てきましたので、事前に何度も警告を出して、カンニング・チェックをしました。これで少し減りましたが、カンニングがなくなったわけではありません。しかしその後、状況が変わります。
3 安定化へと転換した時期に育った世代
チャイナ政府はリーマンショック後の2008年末、4兆元(当時の為替レートで約60兆円)の財政出動をしました。これが海外企業のチャイナ進出を促進しました。チャイナ経済が世界経済に組み込まれていき、発展が加速するだけでなく定着することになります。
1989年の天安門事件の後、チャイナは国際的な孤立の中にいました。そこから抜け出して、2000年頃から経済成長をはじめて、それにドライブがかかった感じです。現在、この前後に生まれた人たちが、留学生としてやってきています。一部が「新人類」的です。
まだカンニングがなくなったわけではありません。しかしコロナ以降、カンニングが減ってきました。さらに一部で、カンニングや不正に対して、内緒で不満を訴えてくる学生が出てきています。上の世代と比べて、何となく様子が違ってきているのです。
10年前の韓国・台湾と比べて、良いとは言いかねます。しかし優秀な学生は「新人類」化しつつあるのかもしれません。留学生を見ていると、新人類というのは、日本独特の世代区分ではない気がしてきます。安定化へと転換した時期に育った世代と言えそうです。