■計画に先立つもの:ビジョンが必要な時代

     

1 計画実行で成功した事例

もうずいぶん前のお話ですが、難関資格試験に異常なほど短期で合格した人のお話を聞いたことがあります。難関大学に入って、そのまま短期で合格したというのではなくて、あるとき一念発起して、勉強を始めた女性のお話です。すごい人だと思いました。

勉強すべき内容を具体的にすべて数え上げて、それを計画に沿って、すべてこなしていくという方法でした。計画は修正しないこと、途中で不安になっても、そのまま推し進めていくことということでした。生活自体も、計画が実行できる設計にしていたそうです。

ご本人も、運が味方した点もあったと話していました。もし不合格だったら、どうするかの計画も立てていたようです。とにかく計画を立てて実行することが最大のポイントだということでした。いまでは、ごく一部の人にしか響かないお話かもしれません。

     

2 計画を立てるための前提

かつては、こういう計画的なアプローチがありました。いまの資格試験や合格のための方法がどうなっているのか、もはや分かりません。しかし優秀な若者たちが、仕事をするときに、こうしたアプローチをとることはなくなりました。前提が違うからです。

資格試験ならば、事前に何が必要で、どうすればよいのかがわかります。成功事例をもとに何をどうすればよいかを計画しても、支障はでません。しかしビジネス環境の変化が大きな時代になると、計画をきっちり立てて実行すればいいとは言えなくなります。

計画を重視する人が少なくなったのは、時代の変化によるようです。その代わりに何が必要になるでしょうか。おそらく仮説を立てて、実行して、それを検証するということになるはずです。しかし仮説を実行するには、計画を立てるための前提が問題になります。

     

3 ビジョンが必要な時代

「仮説⇒実行⇒検証」というプロセスの話を聞いたことがあるでしょう。仮説を立てて、実行して…と言いますが、仮説を実行するためには準備が必要です。いままでのプロセスの一部を変えるだけで実行できるものでない限り、実行は簡単には行きません。

変化が大きなときに、新しいことをやらなくてはまずいことになったら、どのように実行したらよいのでしょうか。簡単には実行できないことに気づきます。計画が必要なはずですが、しかし道筋が決まって、必要な準備がどんなものかわからないとお手上げです。

「どんな方法で・どんなプロセスで・どんな体制で」実行すればよいのか、それがある程度見えてこなくては、計画がたちません。いい仮説が立てられる人は、仮説モデルの構造がみえているはずです。これがビジョンだということになります。

「方法・プロセス・体制をどんな風にしたら、どこまで行けるのか」を示すのが「ビジョン=ビジネスデザイン」です。戦略とも言えるでしょう。ビジネスの変化が穏やかなときなら、計画をいきなり立てることができました。いまはビジョンが必要な時代です。