■思考の整理と表現の工夫:二系統の形式を持つ日本語

       

1 図解も文章も思考の整理が基礎

図解講座をする実施する際に、担当者が「思考の整理」という文言を講座名に入れてくれました。講義の中で「思考を整理して…」という言い方をしていましたが、私には講座名に入れる発想がありませんでした。どうやらこれはよい影響があったようです。

受講される方の中に、思考の整理を問題視した質問をしてくる人がでてきました。今年も、もう少しで講座がありますので楽しみにしています。もともと、これは文章を書く場合に不可欠な話です。思考の整理をしないで文章を書くのは無理があります。

かなりの程度、思考を整理したあとで文章を書きださないと、文章が不安定になるでしょう。詰めた後で文章を書いた場合でも、自分でも思わぬ文章展開になることはあっても、コアの思考がブレてしまったら、ビジネスでも学術でも不可というべきです。

       

2 「ですます」「である」の2系統

文章を書くときに、思考が整理され、それをどう表現するかが問題になります。どう構成していくかと同時に、センテンスのトーンが問題です。誰に向けて書くのかという点が記述の仕方に反映します。「ですます」と「である」の違いにもなってくるでしょう。

プレゼン的な文章と論文的な文章という言い方もできます。あるいは、話しかけていくスタイルである一人称二人称的な形式に対して、記述を読んでもらうスタイルである三人称的な形式ともいえるでしょう。誰に向けて文章を書くかを意識しないといけません。

思考を整理する際に、誰に向けて発信するかという点は、ある種の前提になっているはずです。誰に向けて、何を語るかが決まります。それに伴って、どういう形式で語るかが決まってくるはずです。「ですます」「である」の2系統は必要だということになります。

      

3 「誰に、何を、どのように」と記述

文章を書くにしろ作図をするにしろ、誰に対して必要なものなのかを明確にしなくてはなりません。それを示す場合にも、お題を出して、それについて語っていく場合と、答えを出して、それを説明する場合と、両方の形式があったほうが便利でしょう。

センテンスの構成で言えば、主体となるものを「は」で示す場合と、「が」で示す場合があったほうがよいということです。二系統の表現形式がある方が、合理的でしょう。主題と主格に分けるのはよくても、上位概念として主体という概念が必要になります。

思考を整理して、それを表現する場合の形式を詰めていくと、日本語が一人称二人称的な形式を表現するのに向いているのを感じることでしょう。三人称的な表現の場合、ある種の努力が必要になります。明確な表現、論理的な表現をするのにハードルがあるのです。

同時に、「ですます/である」の二系統、「は/が」の二系統を持つ日本語には、工夫の余地が大きくあります。思考を整理していくことは、表現を工夫することでもあるでしょう。「誰に、何を、どのように記述するか」の全体に関する思考の整理が必要です。