■業務改革の基本:トレーニングで成果が上がる方法

       

1 法学部でのトレーニング

経済学者の浜田宏一教授は『伝説の教授に学べ!』で、法学部で勉強したおかげで、文章を書くのに苦労しなかったと語っていました。法学部でのトレーニングは、文書作成の標準的な方法を教えてくれます。トレーニングは3つの要素からなると言えそうです。

(1)思考の整理と(2)標準的な記述形式、(3)概念の明確化という3つの要素が必要になります。思考を整理するために法的三段論法を使い、標準的な論文形式にそって記述し、概念を明確化するために法律用語を定義するということです。これらが前提になります。

文書の作成までを標準的な形式で一定以上トレーニングしておけば、別の形式の文書も作成できるはずです。浜田宏一教授は大学時代に司法試験や国家公務員試験に合格していますから、この時点で基礎トレーニングは完了していたということになります。

       

2 基礎となる文書作成能力

こうした文書作成のトレーニングは、文書を作成するだけでなくて、ビジネスの基礎になっている点が大切です。ただの文章を書く練習ではありません。こうした基礎があれば、別の領域の知識が効果的に使えるようになります。シナジー効果とも言えるでしょう。

ときどき私のことを業務改革コンサルタントと呼んでくださる方がいます。何だか妙な感じがしますが、自然にそういう言い方がなされるようになってきました。一般にいう業務改革レベルのことが、普通にできるというニュアンスがこの呼び名にはあります。

業務を記述すれば、業務が「見える化」できますから、業務の手直しが容易です。当然、ここでは業務が記述できればという条件が付きます。業務の仕組みが理解できれば、業務は記述できます。思考の整理、概念の明確化ができたらということです。

      

3 マネジメントの中心課題

業務を理解するために何が必要なのかは、あえて言うまでもないでしょう。マネジメントになります。そこにはマーケティングも含まれますし、経営管理の方法も含まれます。まず試行の整理が必要です。法的三段論法よりも面倒だろうことは間違いありません。

判例のように標準的な解釈が明確にならないのが、ビジネスです。成功事例があっても、それを分析する人によって、解釈が変わります。マネジメントの定番教科書というのがなかなかないのも仕方のないことです。本だけではどうにもならないところもあります。

しかしこうやって苦労しながら、ある程度のマネジメントのトレーニングを積めば、現状の業務の記述はできるはずです。記述する過程で、すでに改善が始まっています。ほとんど例外なく、標準化されていないことや、不合理なことが発見できるのです。

「現状の業務」を「あるべき業務」に変えるために、どうすればよいのかを考えるのが、マネジメントの中心課題ともいえます。まずは現状の業務を記述することが不可欠なことです。天才的な人でなくても、トレーニングで成果が上がる方法だと言えます。