■現役の画家が活躍する環境:日本文化の基礎を支える絵画
1 画家は職業ではない
今年に入ってからも、知り合いの画家たちの個展やグループ展が開かれています。現役の画家たちが、油絵作品を中心に展覧会を開き、それを見に行く人がいるというのは、めずらしい話ではないでしょう。しかし、これは当たり前のことではないかもしれません。
展覧会を開くには、相当な負担があります。会場を使用するのにコストがかかりますし、作品を描いて、選択して、搬入するだけでも大変な作業です。これによってビジネスになるのなら、これでもよいかもしれません。簡単にビジネスにならない点が問題です。
画家は職業ではありません。詩人や哲学者と同様に、仕事にはならないという位置づけがどこかにあります。画商や画廊という存在がありますが、画家が絵で食べていくには、それなりの工夫が必要です。多くの場合、指導しながら画家を続けています。
2 クラシック音楽の中核は演奏家
クラシック音楽の場合、演奏会が連夜、開催されています。何とか成り立っているのかもしれません。しかし、演奏家はたいへんだろうと思います。一部の有名な演奏家は別にして、演奏会だけでやっていける音楽家は、ほとんどいないでしょう。
すでに作曲家はごくまれな存在になり、いまや演奏家が中心的な役割を果たしています。この点、画家の場合、まだ現役の人達の多くが展覧会を開いているのですから、ずいぶん検討していると言えるかもしれません。依然として中心となる存在は画家本人です。
しかし今後はどうでしょうか。もしかしたら、このままでは画家が中核にならずに、作品を扱う人たちが展覧会や販売の成功者として、中心的な存在になるかもしれないのです。アメリカの油絵業界は、何となくそんな感じになってきました。
3 悲観的なばかりでない日本の絵画
オペラのようにコストのかかるものは、公的な補助がありますが、多くの演奏会の場合、補助金などないでしょう。画家の場合にも、補助など期待できません。それでもやっていける仕組みがないと、この先は苦しくなってきます。心配な話です。
素人絵を描くのは、今後も続くにしても、時代を経ても残る絵を描くことは、奇跡的なほど難しいことでしょう。それでも、現役の画家たちが作品を発表し続けています。数は質を反映しているはずです。数が多ければ、質の高い作品は作られる可能性があります。
世界的に見ると、日本の油絵を中心とした絵画は頑張っていると言えるでしょう。美大にはアジアの留学生が普通にやってきています。アジアの人達が、日本の油絵に魅力を感じていることも確かです。日本の場合、悲観的なことばかりではない環境にあります。
現役の画家が活躍することは、日本の文化の基礎を支えてくれるはずです。最近になってまた、画廊を閉めるという話が何件か聞こえてきています。ビジネス感覚も取り入れて、元気な業界になってもらいたいと、ささやかながら動き出したところです。