■IDAサイクルについて:OODAループと比較して

     

1 米軍のOODAと自衛隊のIDA

OODAループという考え方があります。日本では、あまり知られていませんが、米軍で採用されている意思決定法といわれています。「Observe・Orient・Decide・Act(観察し、方向づけし、決定して、行動する)」からなるループです。

観察して方向づけすることは、なかなか難しいことのように思います。自衛隊の場合、IDAサイクルという考え方があると、折木良一の『戦略の本質』で知りました。[情報(Information)、決心(Decision)、実行(Action)サイクル](p.136)のことです。

アメリカのOODAループと比較すると、観察して方向づけする過程(Observe+Orient)が情報(Information)に統合しているようでもあります。しかし両者には質的な違いがあるのではないかと感じました。このあたりを少し書いておきたいと思います。

    

2 ループとサイクルの違い

まずOODAは「ループ」ですが、IDAは「サイクル」です。さらにOODAは動詞(Decide・Act)で構成され、IDAは名詞(Decision・Action)で構成されています。「輪になる」という動詞的に表現されるループと、循環される反復のサイクルの違いです。

観察して方向づけができれば、決定することが可能になり、さらに決定されたものは実行につながります。こうした流れが出来たならば、「ループになる」=「輪になる」といってよいでしょう。行きつ戻りつ、結果として輪になる、輪になったということです。

この点、IDAサイクルは段階を踏んでいます。情報を分析し、決定を下し、実行をするというプロセスに基づくものです。決定できないのは、情報分析が不十分であるからかもしれません。プロセスの進捗から、原因究明をしていくことが可能になります。

     

3 整備が必要なIDAサイクル

OODAループは専門家が訓練して使うのが原則であり、使用者の理解力と実践力が問われます。折木良一『戦略の本質』では、ループを[「OODA」サイクル]とし、動詞Observe、Orient、Decideと名詞Actionを混在させています(p.138)。これではダメです。

サイクルにするには、各プロセスを明確にする必要があります。IDAサイクルの「情報(Information)、決心(Decision)、実行(Action)」の場合、どう情報を集めて分析し、どんな基準で決定を下し、どんな計画に基づいて実行するか、の詰めが必要です。

IDAサイクルを洗練させるに、目標管理の手法「実行→測定→比較」が参考になるでしょう。ここでは実行に先立って計画と準備をし、測定に先立って基準と測定方法を決め、比較のために目標設定をします。IDAサイクルも、こうした点の整備が必要です。

高度な判断をする場合、専門家が訓練をして使いこなすループは有効でしょう。同時に、高度な判断を、シンプルな指差し確認として使っていくサイクルも有効なものです。IDAサイクルを整備して洗練させていけば、一般人でも使えるフレームになると思います。