■ミッションとバリューのシンプルモデル:ジャック・ウェルチ『ウィニング 勝利の経営』から
1 ウェルチ流のミッション
ジャック・ウェルチは『ウィニング 勝利の経営』の冒頭「ミッションとバリュー」で、[効果的なミッション・ステートメント]を生み出すのは、「私たちはこのビジネスでどうやって勝とうとしているのか」という問いであると記しています(p.23)。
[この問いかけは、激しい競争の中、収益を上げながら戦える分野はどこかを評価するために、会社の強み・弱みを明確にすることを迫る]のです。当然、[事業を限定する]ことになります。[収益性-これがキーワード]ということです(p.24)。
[儲けがなくては、社会性の高い目標をいくら掲げても無駄]という考えが基本にあります(p.24)。したがって,ミッションの評価は、最終的に収益性で判断されることになるのです。[すごく現実的で、その具体性]に価値が置かれています(p.23)。
2 ミッションとバリューの関係
ウェルチはミッションとバリューについて、[ミッションは方向性を正確に示し、バリューは、その目的に到達するために取るべき行動を表現する]と定義しました。何をするのかを決め、そのためにどういう方法・仕組みで行うのかと考えるのです。
行き先を明確にしたら、どう行動するかが問題ですから、[バリューという言い方をやめて単に行動規範と言ったほうがよい](p.23)ということになります。どこに行くのかと、どう行くのかの2つを決めて、それを成果で検証するのがウェルチの基本思想です。
ウェルチ時代のGEのミッションは、「世界で最も競争力のある企業になる。そのためにすべての市場でナンバー1かナンバー2になる。その可能性のない事業はテコ入れするか、売却するか、閉鎖する」というものでした(p.25)。たしかに現実的・具体的です。
3 検討すべきシンプル・モデル
ミッションを作るのは経営トップの責任であり、各リーダーがそれを現実化させることになります。[ミッションにのっとってよい仕事をした人にはみんなの前で報酬を与え][ミッションを遂行できない人には辞めてもらった](p.25)のでした。
バリューの場合、[全社員の発言の機会を持つべき]です。その方が[洞察力が高まり、アイデアが増え]ます。[どうしても反復作業とな]りますが[広く賛同をかち得ることができる](p.27)のです。当然、バリューに基づいて行動しなかったら解雇になります。
優れたミッションやバリューを作るのは[時間のかかる大変な作業](p.35)だからこそ、ウェルチは[時間をかけてやっていこう。エネルギーを使おう。本物を作ろう]と言うのです(p.32)。収益性を第一にした、現実的・具体的な行動が問われることになります。
日本の組織でも、この15頁分の文章で論じられている内容を、どう考えるべきか、本気で検討してみる必要があるでしょう。ウェルチの伝説はもう消えています。GEはその後、経営悪化しました。しかし検討すべきシンプルなモデルです。私の宿題でもあります。