■マネジメントの本を読む時期と読み方について
1 検証のために読む
たとえ小さくても、組織をゼロから作った人なら、最初からすべてが見通せるものでもなくて、何度となく思う通りに行かないといった経験をするはずです。戦略論の本での話のようには行きません。必ず失敗がありますし、無駄なことをあれこれやるものです。
しばしばマネジメントの本にある事例は、後づけの説明だといわれることがありますし、その通りでしょう。それでも参考になります。試行錯誤した後で、それを整理するときに、このパターンが上手くいったのか…という風に考えるときに役立つのです。
どちらかというと、マネジメントの本は検証に向いています。何かをやるときには、たぶんあの種の本よりも前に、諸々のことが決まっているのです。実践したあとから見返すからこそ、この本は役に立つと判断できます。そうでないと哲学にとどまることでしょう。
2 マネジメントの知識が役立つとき
ドラッカーの本を読む人たちは、経営哲学だからこそ読むのです。具体的すぎたら困ります。実際に組織を作った人なら、ドラッカーが組織を経営できると思う人などいないでしょう。しかし組織のなかで悪戦苦闘しているときに、ドラッカーは役立ちます。
具体的な事例が提示され、それがきれいに整理されていると、かえって強引な感じがするものです。マネジメントの本を読むなら、まだ仕事も十分にできていない時期に、ある種の教養として読むか、実際の仕事をしながら検証として読むべきだろうと思います。
少し前、若手のリーダーが悲鳴をあげて連絡してきました。この人はまったくマネジメントの本とは無縁な人です。わずかなコメントをつけた上で、マネジメントの入門書の該当ページを読んでみてと伝えました。こういう場合に、マネジメントの知識が使えます。
3 役に立つのは全体でなく断片
わずかな一節を読んで、若手リーダーは落ち着いて冷静になったのです。マネジメントの本を読む時が来たという感じを持ちました。マネジメントの原典ではなくて、小冊子のごく一部のみを示しただけです。しかし自分の状況と重なっていれば、それで十分でした。
補助線が示されたのだろうと思います。実際の経験があってこその効果です。こうしたことを見ると、マネジメントの本を読んで議論するのは、どうも妙な感じがします。経験者から教えてもらうことはあっても、平等な議論から何かが生まれるのか疑問です。
いままで何度か、会社を大きくした人から、経営についての話を聞かせていただく機会がありました。ときには大切にしている本に言及されます。そのとき驚くのは、あの本のわずかこれだけが大切だったのか、全体でなくて断片に価値があったのかということです。
マネジメントの本を読むのは、無駄の多い作業ではないかと思います。自分が使えるものは、きわめて少なくて、期待するものはほとんど見つからないものでしょう。違う違う、いらないいらないと読み飛ばしながら、大切なヒントを探すものかもしれません。