■サイモンの「計画におけるグレシャムの法則」:リーダーが知るべき洞察

       

1 低価値のものが高価値のものを駆逐する

サイモンの「計画におけるグレシャムの法則」は大切な洞察です。リーダーは知っておくべき法則と言えます。グレシャムの法則は、貨幣の質を問題にしたものでした。金の含有量の少ない硬貨が出てくると、含有量の多い良貨が使われなくなるというものです。

質の低い硬貨と良質のものと交換されるのはバカバカしいですから、使うなら質の低い悪貨になります。価値あるものが価値の低いものに駆逐される法則です。サイモンは計画・実行においても、低価値のものが高価値のものより優先されがちな点を洞察しました。

サイモンの場合、ケーススタディを経て、この考えを提示したわけではありません。著書にも唐突に出てきます。そっけない記述です。解説記事になると、原典の『オーガニゼーションズ』への言及がほとんどありません。読みやすい本でないことは確かです。

      

2 目の前のノルマを重視する傾向

リーダーになった人に「計画におけるグレシャムの法則」を知っているかと聞きました。知らないとのことです。いま会社で問題になっている話を聞くうちに、そんなことよくあることだからと言って、この機会に意識しておいたほうがよい伝えました。

ノルマとなっているルーティンワークを重視して、改善・改革が後回しになるということです。目の前のノルマをこなすことだけ考えていたら効率化しませんから、いずれ仕事が回らなくなります。効率的な仕組みに作り替えていく作業が行われなくてはなりません。

このリーダーは、上司から業務の見直しのための検討を中止するように言われて、嘆いていました。まだ若者ですが、業務の見直しで成果を上げてきた人です。もっと改善できるという判断でした。もう少し効率化したら、仕事に余裕ができると思っていたようです。

      

3 仕組みの継続的な見直し

リーダーから、私は間違っているのかと聞かれたので、「計画におけるグレシャムの法則」を持ち出しました。検討に時間がかかりすぎたのか、その点を確認しましたが、以前に指導した通りうまくやっています。問題はありません。あとはどうするかです。

検討時間にそれほど時間がかかっていない以上、それ以外のノルマを達成するための効率化を前倒しして一気に進めるしかないでしょう。標準化をする前に、リーダー個人の仕組みを変えればよいのです。得意なところを活かせば、一人だけの効率化はすぐできます。

ひとまずルーティンにおける成果を積み上げられるようにしたうえで、時間を捻出することになりました。そのうちに、理不尽な上司の対応がデマに基づいたものだということが明らかになってきたため、間に人が入ったようです。勝負ありでした。

リーダーの達成率がトップだったので、改善・改革の活動について、不正をしていると言いたくなった人がいたようです。仕組みを継続的に見直せば成果は上がります。その後、全社にあなたの方式を導入していきたいという話があったとの連絡がありました。