■忘れがちな一番の基礎力:日本語の読み書き

      

1 例年行われる就職説明会

例年12月が近づくと、来期の就職に向けて、業界の主要な会社が集まった説明会が開かれます。業界の紹介と、実際の会社がどんな人材を必要としているのか、入社の条件はどんなものなのか、学生たちは話を聞いて少しはイメージができたようです。

実際の就職活動とは違いますから、まだどの会社を受けますというほどではありませんが、徐々に何が必要となるのか、気にしはじめます。思ったよりも、大変かもしれないという気持ちが出てくるのはよいことでしょう。どうすればよいかという話になります。

説明会には、留学生も参加可能です。彼らに話を聞いてみると、ある種のショックを受けていました。日本人のみの募集ですという会社が圧倒的に多いのです。もともと日本人向けの説明会ですし、メジャーな会社が多かったので、こういうことになります。

     

2 人事の担当者が見ていること

実際にサービス業界で人事を担当していた人に、先日、就職のときに何を見ていますかと聞いてみました。留学生なら、圧倒的に日本語の能力だというお話です。まず日本語ができないと、仕事に支障が出てくるので、これは絶対的だということでした。

では日本人はどうでしょうか。日本人の場合、これという明確な基準がないですねとのことでした。見ればわかるようです。サービス業の場合、お客様との関係があるので、経験を積んだ人が見ると、何となく向いているかどうかが見えてしまうのかもしれません。

留学生だけでなくて、日本人も日本語の能力が問題になりませんかと確認してみました。ああ、それは問題ですねとのこと。日本人の場合、向いているかどうかを感覚的に判断して、これが絶対条件のようになっていますが、ただ、その先がありました。

     

3 日本語の読み書きが一番の基礎

業界で必要な資格が必要な場合は、当然持っていなくてはなりません。それは職種によって決まってきます。これは学生でも知っています。しかし関連の資格をたくさん持っている人がときどきいるけれども、あれは趣味であって評価にならないとのことです。

資格試験を最低限取得しておくことは、無駄にはならないでしょうが、それをあまり主張しても意味がないということになります。元人事の担当だった人は、たしかに日本語能力ですねと付け加えました。ただ、学力をもって日本語力を推定していたとのことです。

資料や文書を作ったり、お客様とやり取りするときにも、日本語が関わってきますから、当然のように問題になります。しかし意識して日本人の日本語力を見てこなかったと言っていました。留学生の場合、第一条件にしていたのに、チェックが甘かったようです。

別の会社幹部の人に、こんな話をしたところ、実際にこちらが欲しいだけの日本語の読み書き能力を持つ人が少ないと話してくださいました。リーダーに向けた日本語の講義が来期は増えます。忘れがちですが、一番の基礎は日本語の能力と言ってよいでしょう。