■マネジメントの目的「顧客の創造」:「誰に・何を・いかに」「目的・目標・手段」

     

1 顧客の概念の再定義

ひさしぶりに上田惇生の『100分de名著 ドラッカー マネジメント』を手に取りました。やはり良い本です。帯の表には、「利益は“目的”ではない、継続の“条件”である」とあります。おそらくこれは、現在では常識になっていると言えるでしょう。

さらに帯の裏には『マネジメント』にある文章、「企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである。」という言葉が引用されています。ドラッカーの中でも最も知られたものでしょう。

「顧客の創造」というコンセプトは、マネジメントの中核となる言葉とされています。1990年代になると、ドラッカーは顧客という概念を営利組織に限定せず、非営利組織にも適応可能と考えるようになりました。『経営者に贈る5つの質問』にも、そうあります。

      

2 「誰に・何を・どのように」行うのか

「顧客」の概念が営利組織のみならず、非営利組織にまで使える概念だと考えることによって、マネジメントが、誰に向けてのものなのかが明確になりました。「顧客に向けて」マネジメントを行うのです。「何を、どのように行うのか」が問題になります。

「誰に向けて、何を、どのように行うか」は、マネジメントの基本です。上田の『100分で名著』にも、[「いかに」管理するかではなく、「なにを」管理するか]という見出しがあります。誰が決まれば、「なにを」管理するかが問われるということです。

マーケティングの場合も、「誰に・何を・どのように」行うのかと考えていきます。マネジメントの中核となるマーケティングの場合も、同じ発想であるということです。顧客とする人が誰であるのか、何を提供するのか、いかに行うのかと考えていきます。

     

3 マネジメントの目的「顧客の創造」

この点からすると、「企業の目的」と言わずに、「組織の目的」に修正するのが適切かもしれません。営利組織のみならず非営利組織にも適用される目的が「顧客の創造」であると考えることもできます。組織全体に適応できるなら、その内容も明らかでしょう。

顧客の創造は、「誰に向けて、何を、どのように行うか」を考えることによって実現しうるということです。顧客の概念を再定義することによって、こうした考えが成立します。ドラッカー晩年の修正が、マネジメントの基本を確立したとも言えるのです。

さらに進んで、「誰・何・どのように」は、それぞれ「目的・目標・手段」に関連づけることも可能になります。「顧客の目的は?」「目的達成のために具体的に何を目標とすべきか?」「その実現のためにどんな手段をとるべきか?」…ということです。

顧客の創造のためには、「誰・何・どのように」が問われ、その「目的・目標・手段」を明確にすることが必要になります。これは組織に限らず個人にも適応されるべきものです。よって「顧客の創造」とは、マネジメントの目的だということになるでしょう。