■座る場所から見える日本人と留学生の気質:健全なプライドを求めて

     

1 座る場所と成績

学生数がかつてほど多くなくなったため、学生の数のわりに広めの教室で講義をしています。座席は自由です。こうしておくと自然に座る場所が決まってきます。前の方から順番に埋まってくるわけではありません。日本人と留学生では、かなり座り方が違います。

欧米から留学してきた学生は、中央の前側の席にすわるのが通例です。中国の学生は、それを取り巻くように、仲間同士が対になって座ることになります。多くの場合、前に座る学生は成績が良く、後ろに座る学生は、あまりできがよくありません。

その他のアジア各国から来た学生は特に座席の位置に決まりはありませんが、やや後ろに座りがちです。一人離れて一番後ろに座る場合、あまり自信がない学生だろうと予測できます。基礎的な計算や読解の場合、成績トップは中国人留学生でほぼ決まりです。

     

2 自信の欠如を感じさせる日本人学生

日本人学生も基礎的な「読み書きそろばん」の能力は、座る位置で予測できます。しかし、日本人だけのクラスの場合、一番前の方は空席になるのが一般的です。成績が良くても、一番前に座りません。どこか自信が欠如している感じが見えてきます。

欧米の学生は基礎学力で言えば、まずほとんどの学生が平均以下です。それでも、一番前の中央に座る学生が多く、他国の学生に仲良しがいれば、中ほどの席に座ります。彼らが威張ることなどありませんが、確固としたプライドを持っていることは確かです。

この点、日本人はどうも弱い印象を受けます。何となく家庭での様子を反映しているのかもしれないと、最近思うようになってきました。優しい学生が多いのですが、親の世代に自信喪失があったようにも感じます。親だけでなくて、日本全体かもしれません。

     

3 健全なプライドの獲得

就職の選抜の際に自由席にしておいて、どこに座るかで評価する会社がありました。サービス業の会社です。いまもその選抜方法のままであるかは、もうわかりませんが、この選抜方法はおかしいどころか、優れたものだと思います。前に座る人は有望です。

一歩前に出る積極性がほしいと、サービス業のリーダーから聞いたことがあります。前に座ることが、その積極性の判定に役立つはずです。この点からすると、日本人学生の積極性が弱くなっているのかもしれません。自信とかプライドと関係があるようです。

成績が良い学生は自信があるというわけではありません。飛び抜けた成績なら別でしょうが、どこの国の学生でも、ある程度成績が良くても自信のない学生はいくらでもいます。かつて見かけた、成績が最低ラインなのに、ひどく強気の学生は絶滅したようです。

日本も高度成長のときには強気の人が多かったでしょう。その点、アジアの留学生をみると、各国が高度成長後になったのだとわかります。健全なプライドを持つのには、時間がかかりそうです。日本人学生を見ながら、日本の進むべき方向を考えることがあります。