■何度も成功している人たちとの会話から:偶然性と成功確率
1 どういう環境下での成功か
成功体験が邪魔することがあるのは、お聞きになったことがあるでしょう。あるいは自分でも思い当たる経験をしたことがあるかもしれません。こういう実感として正しいことは、マネジメントを考えるときに大きなヒントになることでしょう。
ビジネスモデルを考えるときに、成功事例を分析して、そこから成功要因を抽出して、対策を考えるというアプローチはよく行われることです。こういうとき、どういう環境下で成功したのかという点について、十分に考慮されないことがあります。
どういう条件で、誰が・何を・どうしたかということが問題です。どういう条件なのか、「いつ・どこで・どんな場合」を分析しないと、成功要因はあてにならなくなります。前提が違ったら、成功要因ではなくなる可能性が高いでしょう。当たり前のことです。
2 重要なのは前提となる状況判断
成功事例を分析したり、ケーススタディをやろうというときに、前提条件となるはずの「いつ・どこで・どんな場合」を明確にすることは不可欠なことだといえます。ケーススタディを論じた本を見てみても、この点に関して不明確なものが少なくありません。
経営学者がどのくらいの実力があるかを判断するなら、「いつ・どこで・どんな場合」が明確になっているかどうかを見ればよいでしょう。実際に苦労して組織を作った人なら、ケーススタディで一番大切なのは、前提となる状況判断だと感じるはずです。
成功事例を見ていく場合、その時の状況に偶然うまく合致していたという幸運の要素がたいていあります。その点を意識して見出していかないと、前はうまくいったのに、今度はうまくいかなかったということになりかねません。成功の再現は難しいことです。
3 偶然性と成功確率
つぎつぎ成功しているように見える人からお話を聞くと、成功している陰には、失敗がたくさんあったとおっしゃいます。状況がどうなのか、事前にわからないから、偶然という要素が必要になるのです。だから、やってみないとわからないということになります。
成功するかどうかは条件次第の面があるのです。その検証が必要になります。まずは大枠を作って、まだ洗練されていなくても状況を見るために、小さく実践してみることです。仮説の検証には、実践が不可欠だということになります。小さく失敗すればよいのです。
成功し続けているのではなくて、成功の可能性のあるものを抽出して、そこに力を入れていくことが成功の方程式なのかもしれません。成功を続ける人たちが、決まって言うことは、やって見ないとわからないですよということです。問題は成功確率でしょう。
ニーズを感じ取り、どういうものなら満足してもらえるか、どう提供したら飛びついてもらえるかを考えたら、試してみるしかありません。そうすれば成功条件に合致しているかの判断が容易になるはずです。…もう少しお話を聞いていきたいと思っています。