■アジアの留学生の注目すべき傾向:低ストレス化の可能性
1 先行き明るい雰囲気の学生たち
あらためて、日本人の学生と留学生に教えるのは面白いものだなあと思います。昨年教えていた学生たちと会って話してみると、今年の就職状況が極めて良かったことが確認できました。入学前に、まだ就職に不安のあった学生たちが、いまはほっとしています。
コロナ前よりも、サービス業の就職状況はよくなっているようです。今年も悪くないでしょう。すでに就職に関して、就職担当の先生方もかつての悲壮な感じはありません。したがって学生たちは、素のままに講義に出てきているといってよいでしょう。
日本人学生たちは、先行き明るい雰囲気の中で、気ままに過ごしています。留学生たちは、日本でチャンスをつかもうとしている様子です。日本語学校に入学した頃、まだコロナの影響を受けていましたから、日本人学生よりも、すこしだけまじめな様子です。
2 東アジアでも「ゆとり教育化」
日本人学生の計算能力や、読み書き能力は、おそらく昨年と変わりません。もしかしたら、昨年の方が上かもしれませんが、わずかなものでしょう。注目すべきなのは留学生のほうです。男女差が出てきています。平均すると、女性の方が成績が上です。
中国が経済的にかなり低迷しているのは、学生たちの様子を見てもわかります。しかし成績は落ちていません。問題のある学生や、成績が平均以下の人が少なくなったということなのでしょう。欧米の学生よりも、計算能力も、日本語能力も上です。
チャイナ経済は、もう回復ということは当面ないように思います。日本のゆとり教育の失敗を見て、手を緩めていなかった中国の教育も、男子学生の落ち着き方から見ると、実質的なゆとり教育になったということでしょう。イケイケの高度成長は終わったようです。
3 女性の活躍が顕著
日本の学校では、成績は女性が上だというのが、もはや常識的でしょう。社会に出てからの活躍も、専門学校生の卒業生たちの様子を見ていると、学校始まって以来の活躍といった成功事例は、最近、女性ばかりという気がします。平和の象徴かもしれません。
今頃になって気づいたことですが、アジアの留学生たちも、中国を筆頭に、日本の後追いをしている気配が濃厚です。「ゆとり教育化」が進み、勉強する範囲は実質的に狭まっているのと同時に、習得も落ち着いてきています。平均化しているということです。
女性が成績で優位に立ち、就職後の組織内での活躍の面でも優位に立ってきている日本の様子まで、アジアの留学生集団が後追いしている感じがします。豊かな層は、国内の経済低迷の影響が決定的ではないのでしょう。今後この傾向が続くか注目しています。
もしこの傾向が続くならば、一定以上豊かな若者たちから猛烈さが消えて、低ストレスの状況になっていくかもしれません。東アジアであと数年の平和が継続したら、政権側が鼓舞しようとしても、日本と同様に、国民は踊らなくなる可能性があるように思います。