■翻訳に堪える日本語を書くときの前提
1 翻訳に堪える海外でも通用する日本語
日本語で文章を書くための講座があります。そのテキストを作り始めました。事前アンケートを実施していただいているので、受講される方のご要望が何となく見えてきます。それなしには、いまの時期、講義内容を決めるわけにはいかない状況です。
若者の状況が変わっているのは言うまでもありません。それだけでなく一部の組織では、部門のリーダーが急速に若返ったり、従来とは違う領域の人が担当するようになったり、大きな変化があります。人が変われば、ニーズも変わるのが通常のことです。
感銘覚えた要望がありました。翻訳に堪える海外でも通用する日本語が書きたいという趣旨の要望でした。ビジネス人としてきちんと仕事をしてきた人だろうと思います。いまの自分にはできていないという自覚もお持ちなのでしょう。その点も立派だと思います。
2 短いセンテンスばかりの文章の問題点
日本語の文章が他の言語になっても、内容がしっかりしていれば、そのまま伝わるはずです。短文ばかりを書いていては訓練にはなりません。源氏物語の文章の優れた点は、長い文、中くらいの文、短い文がうまく組み合わされている点にあると評価されています。
メモ書きのような短いセンテンスだけで文書にしていては、簡潔で的確な文書にするのは難しいはずです。スマフォで迅速な入力ができる若者たちは、メモをスマフォでとっています。様子が変わるのは、それを文書にしなくてはならなくなる場合です。
優秀なはずの教え子たちから、突然SOSのように連絡が来て、忙しいのに無理やり時間を空けて、お願いしますと言ってきます。リーダーになる前に業務マニュアルを作成することが多くなっているのです。緊急の勉強会をやりながら、私自身も学んできました。
3 この説明ですぐにわかるかどうかを確認
内容あっての文章です。内容が伝わってこそ、文章だともいえます。翻訳に堪える文章でなくてはなりません。内容を詰めていくと、文章がよくなるのです。そんな話をビジネス人向けに言い出したのは、2009年頃だったかもしれません。
当時、一部上場になる会社が、国際的なコンサルティングファームに依頼して業務マニュアルを作成してもらったとのこと。ところが使えないというのです。そのあとを見ることになりました。貴重な経験をさせていただいたことを、懐かしく思い出します。
文章を分析していけば、聞き取りをした方の記述が、業務内容を語った方の意図とかなりの齟齬があるように感じました。標準化とは記述されてこそのものですが、キーワードが統一されないまま記述されていましたから、これでは使えるわけもありません。
書かれた文章を読んで、実際にその文章内容が実践できるかどうか、そういう意識で文章を読んで確認していけば、気づくことがあるはずです。教え子にも、新人さんがこの説明ですぐにわかるかどうか考えてと、何度か確認してきました。これが前提になります。