■ドラッカー「事業の陳腐化」(The Theory of the Business)と図解作成講座

      

1 申し込みペースの変化

図解作成講座(9/10-24)の講義をしてきました。たくさんの受講者の方にご参加いただいて、感謝しております。どうやら今年度で一番おおぜいの人にご参加いただけた講座になったようです。オンラインと会場との、いわゆるハイブリッド講義でした。

参加者が多いことは、うれしいことです。同時に、戸惑いもありました。この講座はもう何年も、何十回も実施しています。いままでと特別変わったことはしていないのです。ところが今回、一度の申し込みで満席になり、その後、何度か枠を拡大したとのこと。

申し込みの人数もペースも、何かが変わったことを示唆しています。何があったのか、まだ、わかっていません。会場参加者が多数いましたから、反応は見えるのです。しかし、状況の変化まではわからなくて、いわゆる「予期せぬ出来事」だったかもしれません。

      

2 必ず起こる「事業の陳腐化」

ドラッカーの後期を代表する論文に「The Theory of the Business」(1994年)があります。上田惇生は『P.F.ドラッカー経営論集』で、この論文の題名を「事業の陳腐化」としていました。論文の内容は、「事業=ビジネス」の陳腐化をテーマとするものです。

ビジネスの定義とは3つの要素からなると、ドラッカーは言います。(1)組織をとりまく環境、(2)組織の使命、(3)使命を達成するための中核的な強み…の3つです。こうした要素に変化が起こるにしたがって、ビジネスは陳腐化していきます。永遠はありません。

変化は必然ですから、問題は必ず生じます。兆候に注意しなくてはなりません。ドラッカーは、目的の達成がなされた場合、予期せぬ成功・予期せぬ失敗があったときが、その兆候だと記しています。こういう場合、[考え直すべき時である](p.169)そうです。

    

3 「先延ばしすることによっては治らない」

講座の申し込みのペースの違いが、予期せぬ出来事に該当するほどのものなのか、まだわかりませんが、講座の内容をもう一度考え直す必要があるように思いました。全体として若い参加者が増えてきましたし、ドリル問題の答え方が、かなり違ってみえるのです。

講義後のアンケートの集計がなされた時点で、講義内容を再考しようと思います。すでに昨年、「業務マニュアル作成講座」でも、こうした変化が起きていました。このときは、受講者の急速な変化、とくに若返りが起きたので、これは見えやすい現象ともいえます。

いくつかの会社の人達から、世代交代という話も聞いていましたので、それに合わせて、講義内容を大幅に変更したことがありました。今回は、これとは違った現象だとしか思えませんが、大きな変化が起きているのを感じます。[診断と分析](p.173)が必要です。

参加者が増えて喜んでいる場合ではありません。ビジネス環境の変化、ニーズの再確認、講義の強みが何であるか、これらを振り返り、[システムの欠陥の兆候]を見出す必要がありそうです。[先延ばしすることによっては治らない](p.173)ことは確かでしょう。