■勉強法の王道:もう一度勉強したいという若手リーダーに
1 基本的な勉強がしたいという若手リーダー
ビジネス人になって、きわめて忙しい生活をしていた人が、少し時間が取れる部署に移った時に、きちんとした学問をしておけばよかったと言い出すことがあります。こうした発言を、ここしばらく聞いていなかったのですが、最近、似た話がありました。
コロナのあとの混乱が落ち着いて、少し休ませて新しいことをさせようとしているのではないかと思います。若いリーダー格の人が、いままでやって来た仕事以外に何もできない、もっと基本的な勉強がしたい、でも学校に通うわけにはいかないと言うのです。
学校に通う必要があるのでしょうか。講義と同じくらい詳細な解説をしている定番の本が、各分野から出ています。必要十分な解説と想定される疑問点まで説明されているのです。じっくり向き合ってノートをとっていけば、学校に通うより効果があると思います。
2 サブノートを作る方法:我妻栄
我妻栄は『民法案内 1 私法の道しるべ』で、刑法の基本書を丁寧に読んで、[わかったうえで、サブノートをつくる。そういうやり方で終わりまで一度読めば、あとはサブノートを主にしてせいぜい二度も繰り返せば十分である](p.238)と記していました。
徹底的に理解するために、[二、三頁に、一日も二日も考えることはある。そこをわからすために先生の他の論文を読むこともある](p.238)のですから、簡単ではありません。この方法は、学者になってからも続けているとのこと。参考になります。
まずは入門書をきっちり読んで、ノートを作っていく方がいいかもしれません。定番の入門書を読めば、その次に基本書も読めるようになるでしょう。こうやって勉強するほうが、何年間か学校に通うよりも効果があるはずです。あとは実行あるのみでしょう。
3 エッセンシャル版を作る方法:上田惇生
ドラッカーの翻訳をした上田惇生は、我妻のサブノートと類似の方法で、ドラッカーの考えを理解をしていきました。上田の場合、エッセンシャル版を作ったのです。我妻のサブノートがどんなものか、実物は知りませんが、上田のものは実物が確認できます。
『マネジメント』にエッセンシャル版があるのはご存知でしょう。『経営者の条件』の場合も、『プロフェッショナルの条件』に、すべての章が抄訳になっています。自分の好みの章を選んで、両者を比較すれば、どんな風に作られているのか、確認できるのです。
入門書のエッセンシャル版を作る話を以前、書いたことがありました。それを参考にして、自分のノートを作っていけば効果があります。とはいえ簡単にはいかない場合もあるでしょう。若手リーダーの場合、基礎となる読み書き能力に問題がありました。
自分一人で勉強するとき、読み書き能力が最重要な基礎になります。さらに継続して勉強する習慣をつけなくてはなりません。今回は、そのために学校に行かないとダメだと考えたようです。この機会に、もう一度基礎から勉強すればいいのになあと思いました。