■ある天才的な企画者の発想:継承は可能なのだろうか?

     

1 天才的な企画力は継承可能か

企画を立てる天才的な人がいました。じつは、いまもまだ現役のままです。60歳半ばで仕事をやめたいと言い出し、少なくとも70歳で仕事を辞めるつもりでいました。私自身、やり取りする過程で何度か、辞めますというお話を聞いたことがあります。

しかし、まわりが辞めてもらっては困ると言うので、数年引き伸ばしているうちに、コロナがやってきました。組織が傾いたときに頼りにするのは、この人しかいません。面白いもので、何度か聞いた辞めますというお話は、ご本人からも聞かれなくなりました。

組織の危機的な様子を見て、とてもやめるわけにはいかないと思ったようです。若い人たちを放り投げていくわけにはいかないという風に、私には見えました。ここ数年、一人の人に、さりげなく秘訣を教えているような感じです。継承できるのか、注目しています。

       

2 企画は感性

ご実家の仕事が安定しているようですので、天才的な企画者は、そちらを息子さんに継がせたのではないかと思います。詳細は知りません。ただ、企画をする仕事はさせないと、おっしゃっていました。意外なほど、きっぱりとダメですよとおっしゃるのです。

感性ですから、これは遺伝しません、無理なことをさせても成功しませんからと、おっしゃいます。教えてもどうにもならないと言うのです。そうかもしれません。本人がどうしてもやりたいと言わない限り、面倒なことが多くて、たぶん続かないのでしょう。

この天才的な人のやっていることについて、ごく一部しか知りません。しかし、間違いなくやっていることは、どちらかと言うと当たり前のことです。例えば、いいと思う企画を集めています。これは面白いなあと思うところのある企画が、良い企画のようです。

     

3 詰め切れていない企画術

たぶん、面白いなあ…とか、興味深いなあ…とか、その実態をつかもうとしているのだろうと思います。何が面白いのか、どんな点が興味深いのか、それを一言で表現しようとしているはずです。ときどき、あれは何が面白いというのを聞いたことがあります。

この人の場合、それが面白かったら、それ以上どうするでもなく、そのまま資料も捨ててしまうようです。蓄積したり、あとで見返したりすることは、とても考えられません。そうして、たいていのことを忘れてしまっています。あっさりしているのです。

しかし、面白いと言っていたものが、他のものと組み合わされたりして、全く別の形の企画になって出てくることがあります。別領域の成功事例を見て、そこからの連想が働いて、新しいものが生まれているという感じがします。この点は、おそらく確かでしょう。

この方も70代後半を迎えています。当たり続ける企画の秘密を、本気で探る必要があります。先日、この人に教えを受けている人に、発想法を詰めていかないと、間に合いませんよと伝えました。ご本人よりも、教えを受ける側が企画術を詰める必要があるはずです。