■文章が書けないとリーダーになれない時代

      

1 アマゾンの会議資料

『amazonのすごい会議』で佐藤将之が「アマゾン会議の不思議なルール」の4項目をあげています。「会議は沈黙から始まる」「会議の資料は2種類のみ。1ページか6ページ」「パワーポイントは不可、文章で書く」「出席者の数の上限は“ピザ2枚分”」(p.1)。

ポイントは文章で書く点です。[アマゾンでは、会議の資料は「文章(ナレーティブ)形式で書く」]、それが[印刷され](p.41)、[会議前もしくは会議時に配布され]ますが、[必ずしも前もって読み込んでくることは期待されていません](p.42)とのこと。

プレゼンをしないで、文章で書かれたものが配布されるので、それを読むことから会議が始まるので、沈黙になります。事前に読むよりも、読んですぐに会議をする方が合理的でしょう。こうした仕組みを成立させるためには、文章にも必要条件が設定されます。

     

2 解釈の違いをなくす仕組み

アマゾンの方式で会議をやるなら、[「その場で読んですぐに理解できる文章を書く」ことが資料作成の必須条件]になるのは自然なことです。まさにこうした理由から、[アマゾンでは箇条書きやパワーポイントが禁止されている]のでした(p.42)。

ここで大切なことは、[箇条書きだと、行間を読むことで、人によって解釈の違いが生じやすい](p.42)という点です。[当初は小さなブレでも、時間が経つにつれ大きな解釈のブレになりかねません](p.43)。合理的な仕組みを支える、お見事と言うべき洞察です。

しかし、これが実施できるのは、優秀な社員がいるからかもしれません。アマゾンの仕組みを聞いて、この仕組みを導入しようとした組織もありました。しかし、さらっと文章が書けないのです。時間がかかって、非効率だと言われて断念した例もあります。

     

3 書いたものはごまかしがきかない

今後、提案や企画案の説明、あるいは問題点を共有する場合など、様々な場面で、パワーポイントや箇条書きでなく、伝わる文章で書くことが求められるようになるはずです。少なくとも各部門のリーダーたちは、さらっと素早く文章が書けなくては困ります。

遠藤功は『「見える化」勉強法』で、[私は基本的に「書いたもの」、すなわち「書き言葉で表現されているものしか信用しません。なぜなら、その人の思考は「書いたもの」に凝縮されて表れると信じているからです」](p.124)と記していました。

理由は[書いたものはごまかしがきかない]からです(p.124)。遠藤の本は2010年に刊行されています。アマゾンでは[文章で書くというルール]を[ベソスが2006年頃に設定した](p.44)とのことです。もはや待ったなしというべき状況になっています。

日本では、文章を書くためのトレーニングが適切になされてきませんでした。もはや各人が、自分にとって効果的な方法は何か、自分で考えるなり見つけるなりして、読み書き能力を強化するしかないでしょう。若手のリーダーは本気で考える必要があります。