■優れたレシピ本は業務構築のヒント満載:有元葉子『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』
1 4つの心がけ
有元葉子『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』という料理の本があります。題名が上手いなあと思って手に取りました。そのまま業務にも当てはまります。読んだのは、ずいぶん前のような気もしましたが、どうやら2018年のことだったようです。
「はじめに」で、[作り方の流れや勘所が頭に入ったら、もう、レシピは見ないように、と。でないと、料理が“自分のもの”にならない]と話していると記しています。[料理はもっともっと、シンプルでいい]ということです。4つの心がけが記されています。
(1)「思い切ってやってみる」、(2)「“目指すところ”をイメージする」、(3)「味付け以前に、食感にこだわる」、(4)「味見をする」。業務なら、まず行動、ゴールをイメージして、成果にこだわる、さらに検証を行うこと。こんなところでしょうか。
2 レシピは業務マニュアルの一種
業務マニュアルの説明のときに、料理のレシピを例にあげて説明することがありました。料理自体が業務でもありますし、プロセスが記されているレシピは、業務マニュアルの一種と言ってもよい存在です。おいしさや栄養価といった評価基準もあります。
すぐれたレシピというのは、普通の素材で、手早く作れて、おいしい料理法を示したものです。シンプルであるがゆえに、コツが必要となります。これがノウハウというべきものです。何となく想像できますが、実践して出来上がりを確認してみることになります。
例えば、野菜は[熱いフライパンで短時間で炒める]のが基本。焦げないようにするためには、[野菜に水をたっぷり吸わせて]、シャキッとしたものを炒めると、[早く火が通るし、野菜が甘くおいしくなる]と、料理のコツが示されています。
3 一定以上のレベルが要求される方法
レシピ本は、競争の激しい分野なのでしょう。生活の変化に合わせて、様々な工夫をしたレシピ本が続々と出版されています。ときどきそれらの中に、よくできているなあと思うものが見つかるのです。水準を落とさずに、シンプルさを追求した本があります。
『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』は、ずいぶん売れた本でした。よくできた本です。文章で簡潔に説明していて、プロセスに番号を振るようなことはしていません。シンプルですから、きっちり読めば、実践できると思わせるところがあります。
実際には、手順・方法を間違わないように、何度か確認した上で、実践してみることになるでしょう。「思い切ってやってみる」ということです。懇切丁寧な説明が、実践に結びつくとは言い切れません。実践においては、シンプルさのほうが優先されます。
よくできたレシピ本は、業務マニュアルを考えるときに、たくさんのヒントを与えてくれるでしょう。料理も業務も、シンプルで質の高いモノを目指す場合、安直な方法ではダメです。手抜き法とは違います。一定以上のレベルが要求される方法になるでしょう。