■マーケティングの基本「WHO」「WHAT」「HOW」:和佐高志『殻を破る思考法』のポイント
1 マーケティングの勉強のために
マーケティングの勉強をしたいという若い人が、思いのほか多くいるようです。マーケティングで負けているという意識があるからなのかもしれません。ただし、教科書もないようですし、私に話をしてくださる皆さんは、相当苦労している様子です。
何らかの講座を聞きに行った人もいるようですが、満足できなかったという話をありました。どうも、しっくりこないとのことです。最前線のマーケッターが自分のノウハウを、誰にでもわかりやすく語る講座など、そう簡単に見つかりそうにありません。
相性がありますから、ある程度、基礎的な知識はあったほうがよいのかもしれません。このとき、学者の書いた本はあまり役に立たない可能性が高いでしょう。実務で成功した人の本の中から、そんなに古くない事例を書いた本を見つけるのがよさそうです。
2 マーケティングの型
近年、P&Gのマーケティングが圧倒的だとの評価がなされてきました。日本での影響も大きいことでしょう。P&Gジャパンで成功したマーケッターである和佐高志の『殻を破る思考法』という本があるそうです。どうですかと聞かれたので、読んでみました。
組織のマーケティングですから、[徹底した調査した「データ」がベースになる](p.20)とありますし、CMにタレントさんを起用した話もあります。しかし、こういう話は小さな会社の小さな部門では実践できません。それよりも、以下が大切でしょう。
▼P&Gのマーケティングには、「型」があります。シンプルに言えば、「WHO」「WHAT」「HOW」です。WHOはターゲット、WHATは何を、HOWはどのように。この3つを、マーケティング的に突き詰めていくのです。 p.55
3 「きっとヒットする」と思うものを探し続ける
「WHO」「WHAT」「HOW」を突き詰めていくのは、P&Gに限ったものではありません。マーケティングの基本です。すでに引退したマーケティングの先生が、これだけを考えるように教えてくれました。1980年代からずっと使ってきた方法だそうです。
また、[消費者にリサーチしてもマテ茶は出てこない](p.107)とあります。[マテ茶のおいしさを自分で体感していた][きっとヒットするという確信があった]とのことです(p.108)。たぶんマーケティングというのは、こういうことなのでしょう。
たくさんの体感はありますが、何かビジネスをしようとして、製品やサービスを考えるとき、「これだ!」となるのです。「誰に向けて」が決まると、自分がいいと思う素材の中から、ピタッとしたものが見つかることがあります。それまで探すしかありません。
「WHO」→「WHAT」→「HOW」を考えていき、「これだ!」が見つかるなら、成功する可能性が高くなります。それを見つけるのはたいへんですが、何度も苦労するしかありません。苦労するうちに、見つけやすくなるのだというのです。私はそう教わってきました。