■実務習得のプログラムづくり:問われる習得のスピード

    

1 ケースを並べただけではマニュアルにならない

実務家の先生の講義を、続けて聞くことが出来ました。国の機関にも協力なさっている、業界でもベテランの人ですから、知識は豊富です。直接お話をお聞きしてみても、とても気さくな、いい感じの先生でした。以下、受講の感想を記しておきたいと思います。

まず、いずれの講義でも、受講される方のレベルが高かったことが印象に残りました。少なくとも会場には、現在、実務を担当している人が聴きに来ています。当然のように、具体的な質問も出ていました。こうしたやり取りができた人は、有意義だったでしょう。

私の方は、どういう風に、この分野をマニュアル化していったらよいのかという発想をもって、受講していました。この点、実務家の方と情報に対するアプローチが違います。ケースを並べただけでは、マニュアルにはなりません。さてどうしようかと思いました。

     

2 段階的なプログラムが必要

マニュアルには、ルールが必要になります。こういうルールにしようということを決めていかないと、原則が見えてきません。今回、法律が絡んできますので、法的なアプローチが必要になります。条文との関連で、自分達はどうするかを考えなくてはなりません。

こういうときに、考えるヒントがあると助かると思います。受講された方の中には、4年実務経験があって、最近になって、やっとわかってきたとおっしゃる方がいらっしゃいました。最初の1年は、何のことやらわからなかったということです。

日々努力をして実務を見ていくと、わかってくるのだろうと思います。逆に言うと、新人さんが実務を担うには、段階的な理解をしながら経験を深めていくプログラムが必要だろうと思いました。こうした制度上のフォローがないと、属人化が進みかねません。

     

3 要求される習得のスピード

現在取り組んでいる分野を、強化しようと参加なさった方々の姿は、真剣でした。この方々なら、対応できるようになることでしょう。同時に、受講者からの複数の質問を聞きながら、これは相当な負荷がかかっているなあと感じました。

ある程度の余裕のある職場で、仕事に従事する人たちには、役に立つ講義だったろうと思います。しかし質問を聞いてみると、思わぬ落とし穴もありそうでした。高いレベルの話についていける人たちが、基礎的な理解の欠如した質問を何度かしているのです。

もっと基礎的な理解を固めないと、リスクがあるだろうと思いました。法的な理解があれば、わかっているはずの質問だったり、マネジメントの常識ではないかと思うような質問があったのです。これらは特定分野に適応されるものではなくて、いわば基礎事項です。

実務で必要な知識を得るための講義は必要でしょう。それに加えて、基礎から順番に理解して行けるプログラム作りが不可欠だと思いました。各組織では、そのあたりが抜け落ちている可能性があります。習得のスピードが要求されているように思いました。