■梅棹忠夫『知的生産の技術』再読:アナログの強み
1 考えの素材を蓄積すること
梅棹忠夫の『知的生産の技術』は1969年に出版された本です。先日から、記録のつけ方を何人かで検討しているうち、この本をもう一度読んでみようかという気になりました。いまでも読む価値がある本です。考え方のヒントが現役のまま生きていて、驚きます。
梅棹は発見の手帳をつけていました。考える素材は記録しておくという原則を適応します。[小さな発見、かすかなひらめきをも、にがさないで、きちんと文字にしてしまおうというやり方](p.26)、考えの素材を[かきとめて、蓄積をはかる](p.27)のです。
[新書版のたけをすこしみじかくしたくらいのおおきさ](p.30)の手帳に[1ページ1項目という原則を確立し、そしてページの上欄に、そのページの内容をひと目でしらせる表題をつけることにした](p.31)のでした。その後、手帳はカードに変わっています。
2 カードをくみかえ操作すること
カードにする理由は[くみかえ操作]をするためです。カードを見ていくうちに、別々のカード間に[おもいもかけぬ関連が存在することに気がつく](p.58)ことがあります。これが大切です。カードは[主体的な関心のあり方によって区分](p.59)されます。
蓄積したカードを、何枚も見ていくことが発見につながるのです。この本も[まえから、「知的生産の技術」について、あるいは、カード・システムについて、気のついたことをカードに書いておいたものが、相当たまっている](p.60)、それを利用したとのこと。
細かく分類しないで、ある程度のテーマを決めたら、思いつきを書いたカードを蓄積していきます。ある程度たまってきたら、カードを並べながら考えをまとめるのです。こういう使い方をする場合、電子化されたものよりも、紙のカードの方が使えるでしょう。
3 梅棹式カード発想法
読書の場合でも同じです。読みながら思いついたことを本にメモ書きしておき、読了後にカード化していきます。[一冊の本からつくられるカードは、普通の本で、三枚から三〇枚くらい](p.110)です。[読書は「発見」のための触媒作用](p.114)にすぎません。
ある程度のテーマ別に区分して、あとはカードを組み替えるのです。したがって、[どのカードでも、書いたらかならず日づけを入れる。これは、カードにかぎらず、すべての文書について、実行すべきものであろう]ということになります(p.173)。
考えの断片は複雑ではありません。カード一枚に書けるものでしょう。だからカードという小さな単位で十分です。それらを蓄積していく過程で、自然に思いつきも出てくるでしょう。蓄積したカードを読んでいけば、関連性や全体像が見えて来ることになります。
梅棹によるカード発想法です。思いつきは[宙でかんがえるほうがうまくゆくことがおおい](p.27)ことでしょう。考えるとき、あるテーマに関して、手のひらサイズの紙に書かれたエッセンスが何枚か必要です。安易なデジタル化は逆効果になりかねません。