■インターネットの限界まで記していた糸井重里の『インターネット的』
1 インターネットでのつながり方
糸井重里の『インターネット的』という本は、名著と言われた本でした。いまも、そういう扱いかも知れません。「まるで、予言の書!」という帯がついていました。2001年に出た本です。前半で、インターネットの特徴が記されています。
まず、「3つの鍵」と「もう一つの鍵」を確認してみましょう。鍵のその1が「リンク」です。[問いと答えのセットのようなつながり]である「ジョイント」的なつながりとは違ったつながりかたをするのがインターネット的なところだと言います(p.29)。
▼役割と役割で、肩書と肩書で取引しているときには、流れは変わりません。僕の知っている寿司屋さんが、役割や肩書以外の自分の「情報」(熱心さや、目利きぶり)を表現したから、リンクがつながったのだと思うのです。 p.33
2 一番の鍵は「リンク」
鍵のその2は「シェア」ということ。[翻訳するなら、“おすそわけ”といったニュアンス](p.33)です。「こうしてみた」とか「こうするといい」といったことを伝えることを言います。秘伝のように秘密にするのではなくて、オープンに情報を発信するのです。
鍵のその3は「フラット」。[それぞれが無名性で情報をやり取りするということ](p.39)です。ここでは[年齢、性別、価値などの意味が失われている]状態でのやり取りになります。[地位も名誉も関係ない]ということです(p.40)。
もう1つの鍵が「グローバル」。[国や民族の枠組みを超える](p.45)ことです。まあ、それはそうでしょう。こうしてみてみると、一番の鍵は「リンク」かなと思います。どうつながるか、[はじめっからは想像もできない連鎖](p.31)を成立させるのです。
3 インターネットの限界
糸井は初版から十数年後に発刊された文庫の最後に[続・インターネット的]を追記しています。その後、スマートフォンが登場するなど、新しい状況がでてきました。それに伴って、[コンテンツがどんどん「小分け」になっている](p.263)と指摘しています。
文庫版の追記が2014年に記されたものですから、10年前のものです。[「短く」、「早く」、「ラクに」、という「小分け」の傾向は、今後も進んで行くでしょう](p.264)と記しています。その通りになりました。「小分け」が標準形と言ってもよいでしょう。
▼いろいろな用事の合間に楽しめる、短いコンテンツ。事前の準備がいらず、味わったあとの解説がいらず、その場だけでパッと楽しむことが出来る、コンパクトなコンテンツ。確かにそれはとても便利です。 p.263
インターネットだけで済ませる人も出てきています。その一方で、インターネット的なものだけでは満足できない人も確実にいることは間違いありません。本が消滅しない理由でもあります。糸井は知らないうちに、インターネットの限界まで記していたのでした。