■根本を問う質問の形式:洞察とヴィジョンを生み出すもの

      

1 原因と結果の関係

少し前に【シンプルな方法の落とし穴】というブログを書きました。シンプルで機械的な問題解決の方法は、何となく使えるような気にさせます。しかし実際には使えません。問題解決にならないのです。そんな話を書いたら、もっと関連を書けと言われました。

先日のものは、マネジメント思考の欠如だという話で終わっています。たしかに言葉が足りませんでした。今回は少し違う観点から書きましょう。諏訪良武『いちばんシンプルな問題解決の方法』という本では、2つの質問だけで問題解決になるということでした。

1つ目の質問は「その原因を1つあげてください」というもの。2つ目の質問は「その原因が解決できると、その問題はすべて解決できますか?」でした。原因と結果の関係は、それほど明確なものではありません。最初の質問から、いささか無理があるのです。

      

2 洞察を求める質問の条件

原因をひとまず1つあげたのに対して、この原因の解消が、問題の解決につながるかを問うのが2番目の質問でした。「その原因が解決できると、その問題はすべて解決できますか?」という形式の質問ですから、「Yes・No」で答えられます。

原因と結果の関連性が不明確であっても、その次の質問によって何らかの補強がなされるのならよかったのです。しかし関連性の不明確さを残したまま、これでOKかどうかを確認するだけで終わっています。この形式ではたいてい不十分なことになるのです。

定量的に答えられたり、「Yes・No」で答えられる質問から、問題解決を導くのは困難でしょう。洞察を求める質問の場合、どうしても答えが定性的にならざるを得ません。ドラッカーの『経営者に贈る5つの質問』を見てみれば、明らかでしょう。

      

3 ビジョンの形成

「われわれのミッションは何か?」「われわれの顧客は誰か?」「顧客にとっての価値は何か?」「われわれにとっての成果は何か?」「われわれの計画は何か?」というドラッカーの質問に、私たちは「Yes・No」や定量的な答えはできません。

洞察を求める質問の場合、答えを出そうとして考えること自体に意味があります。正解ではなくて、考える視点を提示する問題提起と言ってよいでしょう。このとき適切な答えとなるのは洞察ある答えであり、そこからヴィジョンが形成されることになります。

当てはめれば、何らかの正解が出てくるものは、いわゆるツールというものです。根本を問うものではありません。質問が、自らの存在を問い、自らの進むべき方向を決めることに役立つならば、結局はそれこそが問題解決につながることになるはずです。

たとえば「学校の成績がよくない」という問題を解決しようとするときに、安直な質問はナンセンスでしょう。これは「自社の業績がよくない」という問題と違いはないのです。これに対し、どんな質問を発するかが問われます。質問の質が問われているのです。

      

カテゴリー: マネジメント パーマリンク