■シンプルな方法の落とし穴:『いちばんシンプルな問題解決の方法』の問題点

    

1 タテの質問・ヨコの質問

問題解決というのは、どんな場合でも大切なことです。どういう風に問題を解決するのか、決まった方法があれば楽でしょう。しかし、これ一つで何とかなるといった決まった方法などありません。それで質問形式で解決していこうというアプローチが出てきます。

諏訪良武『いちばんシンプルな問題解決の方法』という本がありました。講演を聞いたことがあります。2つの質問をするだけで、問題が解決するというシンプルな方法が示されています。タテの質問とヨコの質問をするだけでよいということでした。

タテの質問というのは「その原因を1つあげてください」というもの。ヨコの質問は「その原因が解決できると、その問題はすべて解決できますか?」になっています。解決の事例が書かれている150頁たらずの本です。そう苦労なく読めそうでした。

      

2 「学校の成績がよくない」の解決法

裏表紙に問題とその展開が示されています。「学校の成績がよくない」というのが問題です。これは簡単な問題ではありません。大変な問題だと思います。最初の答えが「勉強時間が足りない」というものでした。原因その1は「ゲームに時間を使いすぎる」です。

この本の問題解決法では、「ゲームに時間を使いすぎる」原因を考えていきます。1つあげればよいのです。ただし、「その原因が解決できると、その問題はすべて解決できますか?」に答えなくてはなりません。解決しませんから、別の原因が必要です。

こうやって、原因になりそうなものを思いつくままあげていくことになります。質問はシンプルですが、使い方は簡単ではありません。「学校の成績がよくない」の原因が「ゲームに時間を使いすぎる」とは別に「まじめに授業を受けていない」が上がってきました。

     

3 マネジメント思考の欠落

こうした機械的な問題解決の方法は、シンプルなものであると、何となく使えるような気になります。しかしこの本で「学校の成績がよくない」原因としてあげられたものは、前記の2つの原因に加えて、「受験の危機感が足りない」というものでした。

ゲームをやり、授業をまじめに受けておらず、受験の危機感が足らない場合、たぶん成績がよくないでしょう。この本では、原因を掘り下げていき、全体が見えてきたと書かれています。これが全体とは驚きです。当然のことながら、これでは問題解決になりません。

やる気になる何モノかがあるはずなのです。その点に言及がありません。やる気になれば、行動につながります。行動が重なれば、なんらかの良い兆候は出てくるはずです。しかしそれで問題が解決するかどうかは、わかりません。検証が必要です。

やる気になる何モノかを加えて実行し、それを測定し検証してみるということになります。その際、測定法、評価尺度、検証方法が問題になります。これが標準的なマネジメントの思考です。こうした点が欠落していると、問題解決はむずかしいことでしょう。

      

カテゴリー: マネジメント パーマリンク