■英語の基本文型の必要性:それをどう伝えるか
1 リーダーも忘れていた5文型
英語の5文型を知らない若者たちについて、前回わずかに触れました。しかしリーダー格の人も、もう忘れたよということでした。第3文型は何かと言われても困るでしょう。第1文型から順に「SV」「SVC」「SVO」「SVOO」「SVOC」が5文型です。
Sが主語、Vが述語動詞、Oが目的語、Cは補語でした。中でも補語の概念は、わかりやすいものではありません。5文型だけでも煩わしいでしょう。そこに「副詞類(A)」が加わります。外国語として英語を学ぶ人が使いこなすためには、何らかの工夫が必要です。
田地野彰は『〈意味順〉英作文のすすめ』でSVOCAを使わずに、英語の骨組みを表現しようとしました。英文は「誰が」「する(です)」「誰・何」「どこ」「いつ」の意味順に並ぶとの主張です。主語Sを「誰が」に代表させるなど、強引ですが示唆に富みます。
2 田地野が「意味順」を提唱する理由
田地野が意味順を提唱するのは、日本語と英語の違いに注目するからでした。[日本の英語学習者にとって重大な問題は、①単語をつなぐ順序(語順)と②主語の入れ忘れだということを指摘し]ています(p.37)。ことに語順が重要だと主張しているのです。
田地野は[マサチューセッツ工科大学のピンカー教授の]研究から、幼児たちが話す言葉が[「動作主(だれが)/動作(する・です)/受け手(だれ)/対象物(なに)/場所(どこ)」という英語の基本的な語順にぴったり当てはまっている]点を指摘します(pp..29-30)。
[幼児たちは文法的には未熟でも、語順の枠組みが出来上がっているので、周囲の大人たちは幼児の話すことを理解できる](p.30)ということです。日本人が英語の語順を身につける際、意味順に言葉を並べていくことが効果的であると判断したのでしょう。
3 7文型の修正案
田地野は『〈意味順〉英作文のすすめ』で7文型を意味順で表そうとしました。これは前回お話ししたところです。しかし主語を「だれが」で代表させてしまうと、「意味順」の妥当範囲が見えてきません。「誰・何・どこ・いつ」はすべて主語になりうるのです。
英語を学ぶ場合、主語という用語が不可欠になります。田地野も、日本人の英語学習者の問題として「主語の入れ忘れ」をあげていました。英語の文構造が「主語と述語動詞」を中核とする点について押さえておく必要があります。前回、その折衷案を示しました。
5文型を基本にして、7文型にする際に加える「副詞類(A)」を、ひとまず「A=どこに」と理解します。さらに第1文型「SV」から分離された「SV+どこに」をその後に置き、同様に「SVO」の次に「SVO+どこに」を置くのはどうかということです。
7文型修正案はどうなるの…とのことでした。「第1文型 SV」「第2文型 SV+どこに」「第3文型 SVC」「第4文型 SVO」「第5文型 SVO+どこに」「第6文型 SVOO」「第7文型 SVOC」です。十分ではなくとも、ヒントにはなるでしょう。