■OJTマニュアルのもう一つの効能

      

1 石膏デッサンの意義

私たちは、普段から人間の顔を見ていますから、様々な顔を見ても、その共通性を感じ取ることができます。人間らしい顔つきかどうか、判断できるということです。描いたものを見れば、人間の顔つきのおかしさは一目瞭然になります。前回はそんな話をしました。

ズレに気づくことが第一歩になって、それを直せるようになるのではないかと思います。これは私自身の経験から感じたことでした。石膏デッサンの意義を自分流にまとめると、こんな風だということです。絵の専門家から、そう言われたわけではありません。

ほかの分野からの類推なのです。何かしら、評価基準を持っていると、これはこうだと言いやすくなります。絶対ではなくても、ヒントが与えられているから大きく外れないとか、あるいはこうだと言いやすくなるということでしょう。

    

2 業務を構築する場合の評価基準

ヴァレリーが『ドガ・ダンスデッサン』で、友人の顔を知っているというけれども、描こうとすると、うまく描けない、私たちは描いてみないと本当に見ることにはならないのだ…、そんな話を書いていた気がします。これなど、評価基準のその先まで含む話です。

例えば、仕事の仕方、仕事の仕組みをどうしたらよいのか、アイデアを出してほしいと言われた場合、どういう人が有利になるでしょうか。おそらく現状の業務を記述したことのある人なら、新しい業務を記述して構築するのにすごく役に立つはずです。

そのときの前提になるはずの評価基準はどうやって得るのかが問題になります。友人の顔を描いたら、私たちはその顔が似ているかどうか、友人らしいかどうか判断できます。そうした評価基準に該当するものが、業務を構築する場合にもあるはずです。

     

3 「指導の効果」+「業務の評価基準」

現状の業務を記述した人なら、業務の記述がどうなっていれば、それが実際に運用できるだろう…ということがわかるはずです。もう一つの問題は、その業務の成果がどうなるかということになります。どうすれば、感覚としてわかるようになるのでしょうか。

これは実際のところ、簡単なことです。OJTをやって、業務を覚えてもらう経験をしてみれば、わかるようになります。どれだけ早く仕事が習得されるのか、どれだけスムーズにレベルが上がっていくのか、指導すれば、こうしたことが目の前で見えるのです。

無理なく習得できて、それがどんどんレベルアップしていく業務スタイルなら、成果が上がります。余裕が出てきたら、さらなる付加的な業務まで追加できることでしょう。指導を標準化していけば、業務自体の評価も感覚的にわかってきます。

OJTを効率的に実施するために、何をどんな手順で教えていくのがよいのか、指導者は十分に考えて、それをマニュアル化しておけば効果的です。指導の効果が上がるだけでなく、業務の評価基準が得られます。OJTマニュアルのもう一つの効能といえるでしょう。

     

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