■身の程を知る人が書いた『マッキンゼー式世界最強の仕事術』

     

1 マッキンゼーで学んだこと

マッキンゼーというコンサルティング会社は世界的に有名ですから、ときどきマッキンゼーの方法とか方式といった言葉のついた本が出版されます。『マッキンゼー式世界最強の仕事術』もそういったものです。著者は1989年から92年まで在職していました。

長期で働いた人よりも、短期で勉強になったと感じた人の方が、ある一面を伝えていることがあります。おそらくこの本が興味を引くのは、著者本人がマッキンゼーで多くを学んだにもかかわらず、それだけを伝えても十分でないという自覚があったためでしょう。

▼どのような技術ゆえにマッキンゼーがかくも成功しているのかを世間に納得してもらうには十分とは言えない。ところが幸いなことに、それを補ってくれる人たちがいた。(中略) インタビューできた10人以上の人たちの知識、その人たちがマッキンゼーで学んだことが、私自身の知識に欠けていた多くの部分を埋めてくれた pp..10-11

      

2 事実から出発すべき二つの理由

この本は、「問題解決は、マッキンゼーの仕事の一つではない。マッキンゼーの仕事のすべてなんだ…」という言葉を引いた上で、「1 解決法をどう構築するか」で始まります。どんな話かは、次の見出し[問題解決は「事実」から出発する]でわかるでしょう。

これ自体は、特別なことではありません。しかし[マッキンゼー式の仕事にとって、事実はなぜそんなに重要なのか? 理由は二つ]とある点が面白いところでした。[事実は直感の欠如を埋めてくれる][事実は信頼性の溝に橋をかけてくれる](p.24)とのこと。

第一に、経験のある人なら[直感的に解決法がわかるかもしれない]が[まず事実に目を向ける]ということと、第二に、[入社したばかりの]人でも[企業の最高経営責任者]に信頼してもらうには、[圧倒的な事実の裏づけが]必要になるということです。

     

3 古くならない所が重要部分

オリジナルな自説を構築するためには、事実から出発しないといけません。仮説を構築するためにも、事実を組み立てて、さらにそれを検証しなくてはならないのです。しかし、この「マッキンゼー式」の説明の方が、ビジネス人には伝わるかもしれません。

事実に基づかないと、直感的に正しいと思っても間違うかもしれませんよ、という方が伝わりそうです。地位の高い人に相手にしてもらおうと思ったら、圧倒的な事実を示すしかないですよというのも、伝わるでしょう。こうした断片がいくつかあるのです。

「はじめに」で、[この本をサンプル帳と考えていただきたい][一番興味をひかれた個所から取り掛かることを私としてはお勧めする]とあります。たしかに興味のある所だけよく読めば十分でしょう。それだけでも十分に読む価値があります。

著者は圧倒的な人を見て、身の程を知っているといった感じです。だから役に立ちます。30年以上前の本ですから、内容が古くなっているのは当然です。逆に、いまでも納得するところこそが大切な部分といえます。もう一度基本を確認するのによい本でした。

     

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