■「保護者住所は受験生に同じ」〇、「保護者住所は受験生と同じ」×…はなぜ?

      

1 受験票の記述についての指示

文章チェック講座を23日に実施しました。おおぜいの方にご参加いただいて感謝しています。講義の最後に、とてもいいサンプル事例となる質問をいただきました。お子さんが県立高校を受験するときに、受験票の記述についての指示があったとのことです。

「保護者住所は受験生に同じ」と記すようにとのこと。「保護者住所は受験生と同じ」ではダメだということでした。「に」と「と」の違いなど、たいしたことないというのは、その通りだと思います。ご質問は、両者はどう違うのかということでした。

二つの文に大した違いはないのです。ただし確かに違いはあります。「に」と「と」の違いです。「に」はある点を示す機能を持ちます。点ですから明確な対象です。一方、「と」は、「と」をはさんだ前と後ろの言葉を並べて結合させる機能を持っています。

      

2 「ある点をゴールとする」vs「並べて結合する」

たとえば「AはBに会った」と「AはBと会った」の違いはどうなるでしょうか。ともにAが会ったのはBです。「Bに」ならば、シンプルに、Bに会った事実を述べているのです。偶然なのか約束してなのかを問うていません。会った事実が前面に出ます。

さらに「Bに」の場合、指し示されたある点をゴールとしています。「団子に串を刺す」「団子を串に指す」に見られるように、動くのは「を」のつく方です。「に」は動かないゴールを示しています。行きつく先に「に」のつく対象があるということです。

一方、「Bと」になると、「B」と「会った」が並べられて結合されます。「AはBと会った」ということは、Aは「Bと会うこと」をしたのです。「Bと会うことをする」ためには、おそらく約束が必要でしょう。そんなニュアンスが加わることになります。

     

3 受験票の主人公は受験生

こうした「に」と「と」の違いを前提にして、「保護者住所は、受験生に同じ」と「保護者住所は受験生と同じ」を見てみましょう。問われているのは「保護者住所」です。これがどういう形で、「受験生住所」と関連づけられるかが問題です。

「受験生に」の場合、受験の主人公たる受験生の住所に一致するということになります。ゴールである受験生の住所に一致するのです。実質的な中核は受験生の方であって、その住所が主で、そこに「保護者住所」が追随している形になっています。

一方、「受験生と」の場合、「受験生住所」=「保護者住所」という対等の関係が成り立つことになります。受験生も保護者も同じという扱いです。受験票の主人公は間違いなく受験生ですから、保護者住所は追随した形式で記述するようにということでしょう。

よって受験票に記述する際に、「保護者住所は受験生に同じ」と記せ、「保護者住所は受験生と同じ」と記さないようにというのは、本来おかしな指示ではありません。しかし、こうした違いをほとんど意識していないでしょうから、戸惑うのも当然のことでした。