■英語を母語とする人向けに作られた5文型:再論

      

1 英文法の活用のされ方

先日書いた「英語の5文型が日本人よりも、英語を母語とする人に効果がある理由:日本語にも必要なツール」を読んだ方から、何を言いたいのかわからなかったとのご指摘を受けました。安井稔が書いていたことをなぞったつもりでしたが、伝わらなくて残念です。

書き方を変えてみます。英語に文法があることは、あえて言うまでもないことです。日本人もそう思っています。では、本来の英文法は、何のために活用されたのでしょうか。きちんとした英語を書くためです。英文法は英語を母語とする人のためのものでした。

英文法の中で中心的な役割を果たしてきたのが5文型です。SVOCという4つの要素で英語の基本的な構文を理解することができます。7文型のほうが妥当だという意見もありましたが、基本的な発想は変わりません。文の基本構造を理解することが大切なのです。

       

2 文意がわかれば文構造がわかる

ところが基本構造を理解するときに、重大な問題が生じます。文の意味が分からないと、基本構造がわかりにくいのです。文の意味がわかるからこそ、正確な文の構造がわかるということがあります。ある程度、文が読める人ほど、基本構造が理解できるのです。

英語を母語とする人なら、文の基本構造を意識していなくても、ある程度、文の意味が取れるでしょう。そういう人が基本文型を学んで、それを意識すれば、どんな文章構造なのかが理解できるようになります。文意がある程度わかる人ほど、5文型は役立つのです。

意味がわかるということと文の構造がわかるということが、密接に絡みます。ある程度、文の意味がわかるということを前提にして、英文法ができていたのです。英文法は本来、英語を母語とする人のためのものなのですから、何らおかしなことではありません。

      

3 日本語の基本要素

以上で「英語の5文型が日本人よりも、英語を母語とする人に効果がある理由」がわかるでしょう。そうなると、日本語の文法にも、英文法の5文型にあたるものが欲しくなります。まさに「日本語にも必要なツール」と言ってよいものでしょう。

このとき、SVOCにあたる基本要素が示されなくてはなりません。それなしの基本文型では、意味がないのです。益岡隆志・田窪行則『基礎日本語文法』によれば、文の基本となる要素は[「述語」、「補足語」、「修飾語」、「主題」という4つの要素]でした。

基本文型を作る要素として「修飾語」は妥当でないので、これを外すと「主題・補足語・述語」になります。これらを使った基本文型はいまだに整備されていません。もしかしたら、日本語の基本文型を作ろうという発想がないのかもしれないのです。

きちんとした文を書こうとしたら、規範を示さなくてはなりません。規範文法などいまさらということでしょうか。なお、基本要素についての自説は【現代日本語の基本要素:「文末(B)/主体(S)/キーワード(K)/TPO(T)」)】というブログに書きました。

      

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