■英語の5文型が日本人よりも、英語を母語とする人に効果がある理由:日本語にも必要なツール

1 英文に接したあとで使うべき5文型

『学習英文法を見直したい』所収の「学習英文法への期待」で安井稔が5文型を論じています。前回一部を引用して、英語の5文型が学習用文法の中核になっている旨を書きました。残念ながら日本語に5文型にあたる基本文型のモデルはありません。

この点、もう少し見ておくべき点があるように思います。英語における5文型が日本人に向けてのものではなくて、本来、英語を母語とする人向けだったということです。日本人への適用も可能だということにすぎません。安井は書いていました。

▼5文型というのは、英語の学習初期段階において学習の出発点をなすものと考えられるものではなく、ある程度実際の英文に接したあと、それらの文の整理に役立つものとして、あとから提示されるべきものであると考えられます。 p.270 『学習英文法を見直したい』

      

2 英語の論文を書く人向け

英語の論文を書く人に対して、基礎の英文ルールにそった文章を書くようにという指導がなされているようです。この場合、英語を書く集団の中心になるのはネイティブの人達になります。ネイティブでも、英語を書くのはそんなに簡単ではないということです。

学習英文法の中核となった5文型について、英語圏でもほとんど活用されていないという話をよく聞きます。しかし本来ネイティブ向けのものだったはずです。外国語として英語を学ぶ[英語の学習初期段階]の人向けのものではないということでした。

そうではなくて、[ある程度実際の英文に接したあと、それらの文の整理に役立つもの]ですから、英語の論文を書くような人向けです。そうなると日本人の初学者向けには、もう一段の工夫が必要になります。安井の論考の力点はそちらにありました。

      

3 高度な文章訓練用のツール

英語圏で高度な仕事をするには、きちんとした英語が書けなくてはなりません。産業革命によって高度な仕事に従事する人が多数必要になると、英文法が拡がります。高度な仕事に就きたい人が、きちんとした英語を書く目的をもって、英文法を学んだのです。

日本のビジネス人、特に若手のリーダーたちが日本語を書く訓練が必要だというのも、同じ文脈で考えられます。「ある程度」以上の日本語は当然、書けますから、そういう人達向けに、日本語の[文の整理に役立つもの]が必要になるということです。

日本語の[文の整理に役立つもの]とは、文を客観的に分析するためのツールといえます。英文がある程度書ける人には5文型が役立つはずです。日本語がある程度書ける人向けに基本文型の発想が必要になります。その際、英語の5文型が参考になるでしょう。

       

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