■知的生産の技術と業務マニュアル

     

1 「知的生産の技術」の目的

梅棹忠夫の『知的生産の技術』は1969年に出版された本です。いまだに読まれています。数年前にも、この本を熱心に読んでいた人がいました。梅棹のカード方式に興味を引かれたようです。その人は、カード方式をデジタル化できると考えていました。

梅棹の考えはデジタル技術と相性がよいのでしょう。私に話してくれた人は、エクセルでカード方式に似たものを作っていたようです。何度も改善しながら、それ自体が面白そうでした。しかし問題は何のための知的生産の技術なのかということでしょう。

分野が違って、名前も「知的生産」という言い方をしなくても、その道のプロ達がよく語ることがあります。質を下げないで、たくさんの作品を、早く作れるようにしないといけないということです。量を増やすと、質も上がってくるという考えが背景にあります。

     

2 組織にも適用可能な方法

知的生産の技術の目的は何かと言えば、質の高い作品を大量に、なるべく早く生産するためだということです。継続的な生産をしようとする人は、その方法を自分で考えなくてはなりません。共通性もあるはずですが、自分に合う方法でなくてはなりません。

個人用ならば、自由でしょう。同様に、組織やグループの場合にも当てはまります。質の高いものを手間をかけすぎずに早く大量にというのは、個人に限られる話ではありません。汎用性のある方法にするためには、なるべくシンプルにする必要があります。

組織の場合、多様な人が実践可能になるシンプルさが必要不可欠な条件といえます。シンプルな方法にするために基礎的なところを詰めなくてはなりません。品質の低下にならないようにするのは大変です。高度な業務マニュアルの場合、ここがポイントになります。

     

3 高度な業務マニュアルの場合

画家などの芸術家でも、質の高い仕事を素早くたくさん生産する人がいます。その一方で寡作の人もいらっしゃいますから、芸術の場合、あまり厳格にQCD(品質・負担・納期)を言うのは無理でしょう。しかしビジネスの場合、QCDが原則になります。

知的生産の場合、発表するしないの問題がありますが、生産量を増やすことで質が上がる可能性が高いため、量が大切です。ビジネスの場合、質を落とさず手間・コストをかけずに素早く生産する仕組みを確立することが基礎体力になります。

大量生産でコストを下げるのか、ブランドを維持して高価格を維持するのかはそれぞれの選択です。大切なのは、質の高いものを手間をかけずに早く生産する方法を持つことです。高度な業務マニュアルの場合、その仕組みを実践可能な形式で示す必要があります。

      

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