■文書を書くときの適切な指針:「ペンシルベニア州の消費者契約法」の指針を参考に

     

1 適切な指針作り

日本語に限らず、文書を書くときの指針というものは役に立つものです。当然ですが、適切な指針ならばという条件が付くことになります。この指針に沿うならば、読む人たちは読みやすくて理解しやすいですよというのが適切な指針と言えるでしょう。

『新聞社も知りたい日本語の謎』の中に、注目すべき指摘があります。アメリカでは[一般の消費者を保護する観点から、家電製品の取り扱い説明書や警告文などでも、もし、一般消費者には読みにくいと判定されれば、製造物責任を問われます](p.214)とのこと。

商業英語を教える杉山晴信は[アメリカでは多くの州で平易文書使用法を制定していて、読みやすい書き方が明記してあります]と指摘します(p.215)。英語力の差が大きなアメリカらしいことです。日本語で文書作成をするときの指針作りの参考になるでしょうか。

     

2 「ペンシルベニア州の消費者契約法」の指針

『新聞社も知りたい日本語の謎』では、杉山が例にあげた「ペンシルベニア州の消費者契約法」の指針が示されています。[きわめて具体的な][言葉の指針]ですので、まずはそれらを見てみましょう。あげられた指針は8項目からなりますので番号を振ります。

(1) 短い言葉、文章、段落を使うこと
(2) 能動態で書く
(3) 一般的に理解できる法律用語以外に、専門的な言葉を使わないこと
(4) ラテン語や外来語などの使用を避ける
(5) 契約法に盛り込む言葉を定義する場合、その言葉に一般人の人が使う意味とは違う内容をもたせて定義してはならない
(6) 二重の意味に受け取れる文章は用いない
(7) 二重否定表現は不可
(8) 例外の例外を作ってはいけない
『新聞社も知りたい日本語の謎』 p.216

書かれていることは、もっともだと言えるものです。しかし実践するときに、どうしたらよいのか悩むことになるかもしれません。指針が示されていても、実践できなくては意味がないのです。そこまで含めて考えないと、指針が適切かどうか判断できません。

      

3 日本人向けの簡潔・的確なルール

たとえば(1)で言う「短い言葉」の場合、しばしば広い意味を持つ言葉だったりします。正確性をどう確保すればよいのか悩むところです。文章を短くというのも、よく言われることでしょう。たしかに簡潔なのがよいのは間違いありません。

簡潔なことと、短さには関連があるでしょう。しかし短ければ簡潔になるとは言えないのです。短いぶつ切りの文を並べでも、わかりやすくはなりません。この点では、(2)以下の指針と違います。(2)以降ならば日本語でもそれに類似した形式を実践できそうです。

指針(1)は英語の場合、適切なのかもしれません。しかし日本語では文法ルールが確立していませんから、短文にするだけでは簡潔にならないのです。外国人向けに「やさしい日本語」の試みがあるとのこと。日本人向けに簡潔・的確の指針が作れたらと思います。

      

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