■現代日本語の基本要素:「文末(B)/主体(S)/キーワード(K)/TPO(T)」

     

1 日本語の基本要素

先週、ブログで「日本語文法書の忘れ物」というものを書きました。日本語の文法では、まだ基本要素が定まっておらず、それを使って文章の分析ができない状況です。通説的な文法書に提示された基本要素では、普通の文をどう分析したらよいのかわかりません。

こんな話を書いたところ、自説はどうなのかと聞かれました。ありがたいことです。基本要素の名前をどうするかについては、いろいろありましたが、基本要素の概念に関してはぶれていません。日本語文法がおかしいと感じた大きな要因でした。

先日のブログの例文にもう一度登場して頂きましょう。北原保雄『日本語の世界6 日本語の文法』に示された例題です。「花子が、本を読みながら、おやつを食べている」という例文でした。この文の「本を読みながら」をどういう要素と見ればよいのでしょうか。

        

2 基本要素についての自説

通説的なテキストである益岡隆志・田窪行則『基礎日本語文法』によれば、文の基本となる要素を[「述語」、「補足語」、「修飾語」、「主題」という4つの要素]としています。基本要素に「修飾語」が入っているのは、何だか妙な感じです。

英語ならば「S(主語)/V(述語動詞)/O(目的語)/C(補語)」の4つが主要な要素でした。こちらには当然、「修飾語」は入っていません。このほうが自然です。日本語の場合、欧米言語の主語概念に当たるものがないという立場が有力になっています。

そうであるなら述語概念も日本語と違いますから否定するのが自然です。こうした用語の問題があります。それで一般用語で基本要素を言い表すことにしました。「文末(B)/主体(S)/キーワード(K)/TPO(T)」の4つを日本語の基本要素だと考えます。

       

3 例文の構造:「S+T+K+B」

センテンスの文末部分と、その主体が対応しています。何らかの行為があった場合、それを行ったのは誰かが気になり、ある現象に対して、その主体は何だとなるのが自然です。対象となる主体を記述しようがしまいが、主体が不明では困るということになります。

「主体+文末」だけでは文のかたちにならない場合、「キーワード」が必要です。これは「補足語-主体」の概念と言ってもよいのかもしれません。これで基本文型が決まります。その文型に対して条件を与えるものが「TPO」だということです。

「花子が、本を読みながら、おやつを食べている」の場合、「主体+TPO+キーワード+文末」という普通の文章だということになります。基本文型となるのは、「花子が(S)/おやつを(K)/食べている(B)」であり、「本を読みながら」はTPOの条件です。

    

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