■人材育成のポイント:見通しをつけること

    

1 人材育成する人を選ぶ

前回、業務の見直しでも人材育成でも、変化の反応を見ることが最重要だという話をしました。それに関連することですが、その前の段階があることを書いておきます。みなさんおやりのことでしょう。人材育成をすべき人を選ぶということです。

リーダーは全員平等に指導などできません。時間に限りがありますし、育つかどうかというのは、当事者の適格性や気持ちも大きくかかわってきます。効果があると思われるときに、一気に指導し、そうでないときにはゆっくりやっていくしかありません。

緩急をつけて指導をしていかないと、リーダーがやらなくてはならない仕事が出来なくなります。本人が能力を伸ばしたいと思っている人ならば、効果的な指導も可能でしょう。そうでない場合、様子を見ながら、それとなくやるほうがお互いのためです。

     

2 転職はもったいない

能力がどんどん伸びていくならば、本人もやる気になりますから、相乗効果のように、一気に能力が上がります。環境整備をして実際に成果をあげていけば、組織と個人の共存共栄になるはずです。当然、その人の評価にふさわしい待遇も考える必要があります。

よくあることなのに忘れがちなことは、人材育成をして能力が上がった人は、他の会社への転職が容易になるということです。能力が上がったら、それを発揮する立場に置く必要がありますし、成果が上がったら、その評価も必要になります。

こんなことは当たり前だと思われがちです。そう思っているなら、実際に対応すればよいはずですが、そうなりません。ときどき、せっかく育ってきたのにやめてしまったという話を聞きます。これは指導した側だけでなく、当事者にとってももったいないことです。

転職に成功する人の割合も低くありませんから、当事者が損するとは言えないでしょう。しかし、もったいないことは確かです。たいてい育ってきた途中の段階での転職ですから、まだ不十分なまま次に行きます。自分でそこからはやっていくのは大変です。

      

3 待遇改善だけでは不十分

この種の問題は、待遇をよくするだけでは解決しないものでしょう。指導する側は、ある程度の期間の見通しを示して、ここまで行けるからと話しておく必要がありそうです。ここまで来ているから、ここを目指せばいいという誘導をしていくことになります。

当人が、どうしたいのかを聞きながらそれらを修正していく場合、途中で職場を変える確率は低いはずです。絶対はありませんが、転職を考える人達の理由を聞くと、もうここでは伸びないと思ったという声が多くあります。その辺を考える必要がありそうです。

進む道が見えていたら、途中でわざわざ環境変化を選択しないでしょう。会社が待遇を改善できないこともありますから、何とも言いかねますが、実力が伸びていてその先が見えている人は、たいていの場合、その先に向かう方にエネルギーを注ぐはずです。

転職の相談が、ずっと続いています。会社も大変ですから、それは仕方ないでしょう。若者たちの甘えもあるかもしれません。しかしちょっとした見通しがあるだけで、大きく変わるように思います。成果主義に基づいた待遇改善だけでは解決するとは思えません。

     

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