■トランプのカードのイメージ:再読 梅棹忠夫『知的生産の技術』

     

1 記憶頼りの作成法

5月12日にOJT用のマニュアルをどう作ったらよいかについて、講義を行います。そのあと6月3日にはマニュアルの電子化と動画の活用についての講義が続く予定です。テキスト作成の時期と実際の講義の時期にずれがありますから、頭の切り替えに苦労します。

連休中、講義の準備をしていたとき、ちょっとしたことですが、記憶があいまいになって出典がわからなくなってしまいました。知らんぷりして、こんな話がありますと言えば、何とかなるかもしれませんが、批判的に取り上げるものですから、結局調べました。

やはり調べないと、今後が心配になります。記憶頼りでコンテンツの叩き台を作ってしまうのです。そのあと、それを確認する作業が続きます。確認とはいえ、この過程で内容が大きく変わったり、内容が展開していくことがよくありますから、楽しみな工程です。

こうしたプロセスを大切にしていけたらと思います。時間をかけて、あれやこれやと考えるのは楽しいことです。ここしばらく、少し忙しすぎました。並行処理というのは、あまり効率のいいモノじゃないと、身に染みてきます。もう少し工夫の余地がありそうです。

      

2 ハウ・ツーものではない『知的生産の技術』

先日何度か梅棹忠夫の『知的生産の技術』について書きました。さすがに、よく読まれた本です。ただ、再読はなさっていないのでしょう。気軽な雑談でしたが、あれは戦後最大のハウトゥー本だからねとの声が聞こえてきました。これは、全く違います。

▼この本は、いわゆるハウ・ツーものではない。この本をよんで、たちまち知的生産の技術がマスターできる、などとかんがえてもらっては、こまる。研究のしかたや、勉強のコツがかいてある、とおもわれてもこまる。そういうことは、自分でかんがえてください。この本の役わりは議論の種をまいて、刺激剤を提供するだけである。p.20

この本でカード方式が示されているものの、それも絶対ではありません。[たとえば旅行のときなどは、カードよりは手帳の方が便利だと思っている知的生産の技術としては、手帳とカードは一長一短であろう](p.32)とあります。私は手帳を選んで挫折しました。

話をしてみると、この本をかつて読んだといっても古い話ですから、かなり記憶違いのままに話をしている人がいる様子です。自分の場合でも再読してみて、あれもこれも忘れていたという状態でした。この本は、もう一度読んでみる価値があると思います。

     

3 トランプのカードのイメージ

この本について議論をするよりも、もう一度かつて読んだ記憶を確認するつもりで再読してみると、新しい発見があるはずです。カードの使い方について、梅棹は興味深い指摘をしていました。おそらくこの本で一番大切な部分の一つではないかと思います。

▼カードの操作の中で、いちばん重要なことは、くみかえ操作である。知識と知識とを、いろいろにくみかえてみる。あるいはならべかえてみる。そうするとしばしば、一見なんの関係もないようにみえるカードとカードのあいだに、おもいもかけぬ関連が存在することに気がつくのである。そのときには、すぐにその発見をもカード化しよう。 p.58

トランプのカードのように、自由に並べ替えたり、組み合わせたりというイメージが浮かんできました。既存の要素から新しい組合せを見つけることが、創造につながります。既存の要素の数を増やし、連想を働かせて新しい組合せを考えたいと思いました。

まだ具体的にどういう方法がよいとまでは思えなくて、相変わらずルーズリーフに思いつきを書きこんでいます。トランプのカードのように使える方法を考えたいと、連休中思っていました。ただしカードでない方法がよいのです。その理由はまたあとで書きます。

     

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