■現代の文章:日本語文法講義 第17回概要 「文末概念の機能と条件」

* 連載17回目はこちら

    

1 機械翻訳流の分析方法

述語という概念は、明確になっていません。橋本武の『中学生のやさしい文法』の説明法を発展させて、[日本語の文には基本タイプが三つあり]の部分が補強され、述語の中核となる言葉の品詞が「動詞・形容詞・名詞」からなっているという説明になりました。

これをさらに発展させて、述語の品詞によって[日本語の文]の[基本タイプが三つ]になり、それが「動詞文・形容詞文・名詞文」となったと説明しています。さらに「ボイス、テンス、アスペクト、モダリティ」という概念が示されるようになりました。

小西甚一が『古文の読解』で[文法でいちばん大切でないのが、品詞分解だろうな](p.239)と言ったのを思い出します。いわゆる述語を分解してみせたのです。なんでこうなってしまったのでしょうか。吉川武時『日本語文法入門』に興味深い記述があります。

▼最近、機械翻訳が注目されている。機械翻訳の目的で日本語を分析するとき、「格文法」という理論を用いると考えやすいという。格文法では、まず最初に、文を「核文」(Proposition)と「モダリティー」(Modality)とに分ける。つまり、文は「核文」と「モダリティ」とから成るとするのである。 p.10 吉川武時『日本語文法入門』

この説明でお分かりでしょう。現代の日本語文法では、文末から「モダリティ」を切り離し、述語を切り出した上に、これを「+ボイス+アスペクト+テンス」に分解・分析しているのです。機械翻訳の発想が入り込んでいるのか、読み書き向けではありません。

     

2 文末の機能

「いつ・どこで・誰が・何を・どうした」というフレーズを知っていると思います。この最後が「どうした」から「どうしている」「どうしているだろう」「どうしているかもしれない」となっても文末の機能は変わりません。文末がキーワードを束ねています。

・いつ   …どうしているかもしれない
・どこで  …どうしているかもしれない
・誰が   …どうしているかもしれない
・何を   …どうしているかもしれない

述語のように、文末を分析しても、あまり意味がありません。文末は一体性が重視されます。そして文末の大切な機能は、3つにまとめることができるでしょう。(1) キーワードを束ねる機能、(2) 文の意味を確定する機能、(3) 文を終える機能…です。

ここで気をつけるべき点は、文末の範囲を明確化することだといえます。「私は彼に会いに行った」という例文の意味が分からない人はいないはずです。しかし文末との対応関係を作ろうとすると、簡単にいかないことに気づきます。どう解決したらよいでしょうか。

     

3 文末概念の明確化が必要

例文「私は彼に会いに行った」のキーワードを文末と対応させようとすると、困難な状況になります。「○ 私は…行った」「▲ 彼に…行った」「○ 会いに…行った」となりますから、どうもおかしいでしょう。文末が「行った」ではないということです。

対応関係を基本にすると「私は…会いに行った」「彼に…会いに行った」と考えるのが合理的だといえます。意味はどうなるでしょうか。おそらく「会う」という目的をもって「行った」のですから、事前に連絡して日時・場所を決めていた可能性が高いでしょう。

この例に見るように、文末の概念を明確にするためには、もう少し詰めが必要です。具体的には、キーワードの概念を明確にすることが必要になります。「私は」と「彼に」ではセンテンス内の役割・機能に違いがあるでしょう。次回以降、考えてみたいと思います。

     

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