■一番読まれている思考法の本:『0ベース思考』

      

1 早食い選手権で優勝した青年

昨日触れた『0ベース思考』は、少し前の話のようですが、一番読まれている思考法の本だとのことでした。それで読んでみたのです。たまたまインセンティブの話のところに、人はなぜ予測したがるのかが書かれていました。しかし中心は別のところにあります。

第3章「あなたが解決したい問題は何?」のなかに、【ゼロベースで、問題を「正しくとらえ直す」】という見出しがありました。有名な「国際ホットドッグ早食い選手権」で優勝した日本人の若者の話です。サンプルケースとして、使える気がします。

小林尊(タケル)という青年を、ご存知の方がいるかもしれません。[早食い界のスーパーボウル「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権」]で、[3回以上優勝した人は一人もいない]中、優勝した[次の年も、その後の4年間も続けて優勝]したのです。

[きゃしゃな体つきで][全然大食いじゃなかった][日本の控えめな大学生]が[大学で学んでいたゲーム理論]を使って、[頭を使ってライバルを出し抜く]方法を生み出して、[「突然変異」的な記録]つまり[世界記録を倍に伸ばし]て優勝しました。

      

2 従来とは違ったアプローチの選択

当然のことながら、どうやったら優勝できるのかが気になります。[何カ月もの一人での特訓が、実験とフィードバックの大きなサイクルだった]とのこと。出場者を見てみると[みんな似たような戦略をとっていることに、コバヤシは気がついた]のです。

ホットドックを普通に食べるよりも、[食べる前にソーセージとパンを半分に割]ると[口でやっていた仕事の一部を手に任せられてラクになった]。さらに[ソーセージとパンを一緒に食べる]という[みんながやっているもう一つの方法に疑問をもった]。

▼そこでソーセージとパンをばらしてみた。パンを外したソーセージを手で半分に割って数本まとめて飲み込み、それからパンを食べることにした。彼はワンマン工場よろしく、アダム・スミスの時代から経済学者が魅了されてきた分業化をせっせと進めた。 p.83

さらに[2つに折ったソーセージを片手で口に詰め込みながら、もう片方の手でパンをコップの水に浸し、余分な水をぎゅっと絞ってから口に放りこんだ]。ビデオに撮り、データを入力して、睡眠や[精神的にハイな状態に]する方法なども工夫したのでした。

      

3 新しいと言うより基本的な方法

この本の著者スティーヴン・レヴィットとスティーヴン・ダブナーはアプローチの違いを指摘しています。通常なら、もっとたくさん食べるにはどうするかを問うでしょう。しかしコバヤシは「ホットドッグを食べやすくするにはどうしたらいい?」と考えました。

過去の記録も無意味だと考えています。[記録そのものが人為的なバリアになっている]と考えたのです。スポーツの世界でも、実際よりもスピードを速めた映像を見ながら訓練をすると、それまでの記録を超えられるようになることが、最近の研究にあるそうです。

大食いの訓練は[たいていの人が悪趣味だと思う]でしょうが、方法は参考になります。「売上げを拡大する方法」を考えるより、「買いやすくするにはどうしたらいいか」と考えることです。その際、従来からの戦略とは違うアプローチを見出す必要があります。

プロセスを一つ一つばらして、もっと合理的だと思う手法を確認し、採用していくのです。プロセスの順番を変える、一体化した作業を分解してみる。これらは新しい方法と言うよりも、基本的な方法でしょう。そんなに新しい思考法はないのかもしれません。

      

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