■優秀な社員を伸ばす組織を:トップの腕の見せどころ

     

1 自分の仕事の方法を意識すること

今年に入って、卒業生たちと何度か話をする機会がありました。みんな元気そうなのは、若いから当然かもしれません。自慢の教え子たちです。ほとんどが同期で一番とか、会社で一番という評価を受けています。もともと向いている分野の会社に行ったからです。

しかしそれだけではありません。仕事をしながら、それを意識するように、自分の仕事の仕方を記述するように話しています。自分用の業務マニュアルを作っているのです。こういうことを他の人たちはしていないのでしょう。すぐに飛び抜けた存在になります。

デザインをする仕事に従事している教え子には、うまくいったときに、どういう手順で行っていたのかメモをするように言いました。記録して送ってきたものを見ると、何かが抜けていると感じることがあります。それを指摘して送り返すということをしてきました。

そのうち単なる手順ではないことに気がついてきます。何でそういう方法を選んだのか、そこから考えると、全体の手順に甘さはないかという話になっていくのです。たいていの場合、そうしたやりとりをするうちに自分の仕事の方法を意識することになります。

      

2 飛び抜けた社員に負担を強いる組織

業界で知る人ぞ知るきっちり社員教育をする会社では、やりたいことを自由に選べるようにしながら、各人が仕事のレベルアップをするプログラムを作り上げています。そういう中で成長してきた人たちは、自然に後輩たちにも、その仕組みの中で話ができます。

こうやって恵まれた中で成長していく人たちがいる一方、社員教育といえるものがあるのか疑問に思える組織もあります。この種の組織で働く教え子たちには、少し気をつけるように言わなくてはなりません。ひどい話ですが、何人かが倒れてしまいました。

仕事のできる人に仕事を回したほうが効率的ですから、少数に仕事が集中していくのですが、それが極端なのです。先日聞いた話でも、メールの処理だけをみても他の人の数十倍、それもすべて面倒なメールの対応だとのこと。会社も知っているというのです。

こういう例がまだあります。会社がきちんとした社員教育をしてくれないのなら、自分で自分を教育しなくてはならないと言い続けてきました。当然、自分用の業務マニュアルを作っています。すぐに成績はトップになります。その結果が仕事の集中です。参ります。

      

3 トップの腕の見せどころ

創造性を発揮する分野であっても、マニュアル化できるという発想で話をしてきました。芸術を教える学校が存在するように、デザインや企画を立てる部門でも、その方法があるはずです。そういう分野の仕事ほど、自分用のマニュアルが必要になります。

こういう発想で働いている跳び抜けた人を、もっとその分野で飛躍させようと組織側が考えるのならよいのですが、そうはなっていません。付加価値がついたら困るのでしょうねと、皮肉を言いたくなるバカげた仕組みが、日本の中小企業にはいくらでもあります。

何人かの教え子が転職をして、会社がその穴を埋められずにいる話は、ある種、痛快ではありますが、あまりに組織側の対応が拙すぎてがっかりします。先のメールが集中している教え子には、ちょっと秘策を伝えました。あとは組織側の考え方次第です。

せっかくすばらしい人材が採用できたとしても、その人たちに活躍してもらう体制がなかったら、結果として組織は損をします。希少価値である彼らをリーダーにして、ノウハウを組織の財産にするほうが賢いのです。幹部や部門トップの腕の見せどころでしょう。

      

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