■知識・情報・データの概念:知識社会とはどんな社会か

    

1 「知識」の概念のあいまいさ

ドラッカーは著書の中で、「知識社会」とか「知識労働」という用語を使っています。ここでいう知識とは、どんな概念なのでしょうか。ドラッカーの本を読む人に聞いてみると案外、「知識」の概念があいまいなことに気がつきます。

知識とはどんな内容であるのか、情報とどう違うのか、あるいはデータとどういう関係にあるのか、上手に説明するのは難しいことです。「知識社会」という言葉を使う人に、知識がどんな概念なのかを聞いてみましたが、満足できる答えは得られませんでした。

ドラッカーは知識をどう考えているのでしょうか。著書の中で定義していればよいのですが、ドラッカーの場合、キーになる用語でも定義をしないのです。上田惇生先生に聞いてみたら、その時々で使っているから定義していないという答えでした。

      

2 データと情報の概念

知識社会とはどんな社会なのか、知識に対する明確な概念がないと、明確になりません。しかしドラッカーの著書から、その定義を探るのは無理なようです。基本から考えるしかないでしょう。データ・情報・知識の概念を関連させて考えるのがよいと思います。

まずデータとはどういう概念でしょうか。これら3つのなかでも、基盤にあたる概念といえるでしょう。データとは、測定や調査の定量的な結果であるといえます。基礎にあたる資料というべきものです。データが基礎になって、情報が生み出されることになります。

では情報とは、どんな概念でしょうか。あるテーマに関して、データを分析して得られた客観的な解答といえるでしょう。データだけでは、状況が見えてきません。分析が必要です。分析によって、この点はどうです、これはこうですといえます。それが情報です。

「Aはどうなります」という場合、その理由を明示できることが必要です。「なぜならば、こうだからです」と言えなくてはなりません。「Bはこうです」という場合なら、こういうデータがそろっていますから、これらから明白ですと言えるということです。

      

3 知識の概念

データは基本資料にあたる概念だということでした。その基本資料をもとに、分析した結果、あるテーマに対する客観的な解答が導き出されたなら、それが情報です。そうなると知識というのは、どういう概念になるのでしょうか。情報との違いが気になります。

知識とはまず、実践できる概念です。情報はいわば解答にあたりますが、知識は方法にあたります。「こうすればうまくいきます」「こうやれば、実践できます」という方法です。実践方法、達成方法、ノウハウにあたるものが知識ということになります。

畑村洋太郎は『失敗学のすすめ』で「知識化」という概念を提示しました。知識にすることで、再び失敗することがないようにするということです。失敗しないようにする方法が知識化だとするならば、さきの知識の概念は、これと合致するということになります。

知識社会、知識労働という概念を考えるときにも、この知識の概念が当てはまることでしょう。実践方法がわかり、それを身につけていることに価値を見出す社会、労働形態であるということです。以上を知っておくと、役に立つ場面があるのではないかと思います。

       

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