■目標管理のサイクル:マネジメントの大原則

     

1 目標管理とは自己目標管理とは違う

目標管理について一番の基礎になるのは、実行・測定・比較のサイクルです。しかし意外に知られていません。ドラッカーが「自己目標管理」を主張したことをご存知の方がいても、その前提への理解がないことがあります。確認しておくのもムダでないでしょう。

ドラッカーが目標管理という概念を提示したと書かれていることがあります。『現代の経営』上巻の11章にある「自己管理による目標管理」(自己目標管理)のことを、「目標管理」だと勘違いしているケースがあるのです。ただの目標管理とは違います。

「自分で」目標管理をするというのが、ドラッカーの自己目標管理です。当然、その前提に「目標管理」の概念があります。それが例によって、ドラッカーの本には書かれていません。[目標管理には特別の手法と非常な努力が必要である](名著集)とあります。

▼組織に働くものは、事業の目標が自らに求めているものを知り、理解しなければならない。上司もまた、彼らに求め期待すべき貢献を知らなければならない。そして彼らを評価しなければならない。 『現代の経営』上 :名著集 p.166

      

2 「実行⇒測定⇒比較」のサイクル

ドラッカーが提唱した自己目標管理(自己管理による目標管理)から、「自己管理による」をなしにして、「目標管理」だけを取り出さないといけません。そのつもりで『現代の経営』を読んでみると、目標管理の概念が抜け落ちていることに気がつきます。

どうやら目標管理の手法を、ドラッカーはその他の人同様、明確に認識していなかったようです。管理側が労働者側に目標達成を要求し、実際に達成したかどうかを確認するという一般用語としての目標管理の概念を前提とすると、目標管理は見えてきません。

「実行⇒測定⇒比較」を循環させるのが目標管理のサイクルです。実行して、それを測定して、目標と比較するからこそ、目標管理が出来ます。なんとなくPDCAに似ていると感じるはずです。日本発のPDCAは目標管理のサイクルを変形させたものともいえるでしょう。

しかし実行するには、どう実行したらよいのか、その方法・仕組みが標準化されていなくてはなりません。また測定方法とその尺度が示されていることが前提になります。さらに客観的な目標の明示が必要です。PDCAはかなり大きな変形といってよいでしょう。

     

3 マネジメントの大原則

目標に到達するための方法を考え、それを明示した場合、それは目標達成手段を確定したことになります。戦術の決定ということです。それを実行していきます。そのとき自分たちがどの位置にいるのか、測定することによって状況を把握することが不可欠です。

いまどこにいるのかを把握するときに、その方法と基準が確立していなくては、ブレが出ることになります。いま自分たちがどこにいるという現状の把握がなされることによって、目標とする地点とどのくらいずれているかがわかり、対策が立てられるのです。

目標とは客観的な概念です。定量化が可能であるか、少なくとも達成したか未達成かがわかる概念でなくてはなりません。大目標を各プロセスに落とし込んで、それらを管理するためには、客観基準が必要です。そうしてはじめて目標との比較ができます。

目標管理とは、業務の実践方法が標準化され、その評価方法・測定方法が確立され、目標値が示されることを前提とするものです。その上で「実行し、それを測定し、目標と比較すること」が目標管理だということになります。以上はマネジメントの大原則です。

     

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