■「補語」という概念について

    

1 補語という概念の説明

英文法でも日本語の文法でも、補語という用語が使われています。英語の5文型なら、S+V+Cの第2文型と、S+V+O+Cの第5文型の「C」にあたるものが補語だということでした。日本語での補語に関して、明確な定義はないのかもしれません。

英語であっても、この補語というものの概念は不明確だと感じていました。第2文型ならば、S=Vだという説明がなされます。あるいは第5文型なら、O=Cだということです。このイコールの意味が明確になっていません。よくわからない説明だと思います。

先日、英語を教えている先生に基礎的な教材で何がいいのかをお聞きしたところ、言下に「Forestがいいです」と言われました。いちばん新しいのは2013年の第7版です。もはや新本では入手できなくて、古本で購入しました。わかりやすい説明の本です。

      

2 英語の補語概念はわかった気がした

補語をどう説明しているか確認してみましょう。Forestでは[主語や目的語が「どういうものなのか」あるいは「どういう状態にあるのか」を説明する、文が成り立つために必要な語を補語と呼ぶ]とあります。[補語になるのは名詞、代名詞、形容詞]です。

イコールというのは、主語・目的語となる言葉が「どういうものか」を示すこと、あるいは「どういう状態にあるのか」を示すことだということでしょう。「どういうものか」にあたるのは、「My ulcle is an actor.(私のおじは役者です。)」のような例です。

私の叔父はどういうものかと言えば、役者です…となるでしょう。Cの品詞は名詞です。名詞になるのはやや例外的な存在で、[SVCの文では、形容詞をCとする動詞がほとんど]とのこと。「どういう状態にあるのか」を説明するのが形容詞です。

イコールとの説明ではわかりませんでしたが、何だか、わかったような気になりました。主語・目的語が「どんな人なのか、どんな物なのか」を、状態(形容詞)や地位・上位概念の名称(名詞)で説明するということでしょう。私には納得できる説明でした。

     

3 日本語の補語概念はわからないまま

一方、日本語でいう補語については、まだ明確な理解が出来ていません。Wikipediaの説明によると、[述語の意味を補う文の要素を補語という]とのこと。補語には[必須のもの(必須補語)と必須でないもの(副次補語)に分けられる場合がある]とあります。

このWikipediaの説明は的外れなものではないでしょう。そして[以上の補語から主語と客語(「を」で示され、直接目的語に当たる)とを除いたものを、狭義に補語ということもある]との説明も丁寧だと思います。しかしずいぶん不明確な概念です。

「日本語に主語はない、主格補語である」と言われても、よくわかりません。広義の概念でいう補語の場合、主語も補語になるようです。しかし、Wikipediaの「主語」の項目には[専門的には日本語の主語について統一した見解は今のところなく]とあります。

日本語の文法で問題になるのは、使われている主要な用語でも、統一的で明確な概念が示されていない場合があることです。基本用語の概念が違っていると、話がかみ合わないことになります。定番の基本書がないのも、こうした理由によるのかもしれません。

    

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